2026.09.09

徳島県警の30代警部補による指導放棄(不作為のハラスメント)事案から考える、職場環境の改善とガバナンス|一般社団法人クレア人財育英協会

この記事の結論:徳島県警の30代警部補が、部下に対してそっけない態度をとり必要な指導を行わなかったとして、ハラスメント認定を受け所属長注意処分となりました。この事案が示す重要なポイントは、大声で怒鳴る・暴力を振るうといった「積極的な加害行為」だけでなく、職務上の義務を果たさず相手を孤立させる「不作為(やらないこと)」もまた、職場環境を悪化させる重大なハラスメントに該当するという点です。組織は、ハラスメントの概念を正しくアップデートし、部下の成長を阻害する「指導の放棄」を客観的に監視・是正する体制を構築する必要があります。

  • 徳島県警の警部補が、部下にそっけない態度をとり必要な指導を行わなかったことで処分を受けた。
  • 「人間関係からの切り離し」や「指導放棄」といった不作為は、精神的な孤立を招くハラスメントである。
  • ハラスメントに対する認識を組織全体でアップデートし、情報提供が適切に機能する外部環境の整備が求められる。

「不作為(やらないこと)」もまたハラスメントである

徳島県警察本部において、30代の男性警部補が部下1人に対してそっけない態度をとり、業務上必要な指導を行わなかったとして、ハラスメント行為に当たると認定されました。情報提供をきっかけに発覚し、当事者2人は別々の部署へ配置換えになったと報じられています。

ハラスメントと聞くと、暴言や威圧的な態度、過大な要求といった「目に見える攻撃(作為)」を思い浮かべがちです。しかし、厚生労働省が定めるパワーハラスメントの類型には「人間関係からの切り離し」が含まれており、無視や隔離、必要な情報を与えないといった「不作為(やらないこと)」も重大なハラスメントとして定義されています。この認識のずれが引き起こす組織的な課題は以下の通りです。

不作為のハラスメントが抱える課題 現場で生じやすい実態 職場環境への影響
加害者の無自覚さ 「怒鳴っていないからパワハラではない」「相手が仕事ができないから放っておいただけ」と自己正当化しやすい。 加害行為であるという認識が欠如しているため、自然な改善が見込めず問題が長期化する。
被害の潜在化と立証の難しさ 暴言などの明確な証拠が残りにくく、周囲からも単なる「相性の悪さ」として見過ごされやすい。 被害者が孤立無援となり、「自分が至らないせいだ」と精神的に追い詰められていく。
人材育成機能の停止 業務に必要な指示やフィードバックが行われず、部下が業務を遂行できない状態に置かれる。 組織全体の生産性が低下し、優秀な人材の離職やメンタルヘルス不調を招く。

ハラスメント認識のアップデートと「情報提供」の重要性

私たち一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメントのない健全な職場環境づくりを推進する立場として、本件が「情報提供を機に発覚した」という点に注目しています。

不作為のハラスメントは当事者間の密室状態になりやすく、被害者本人が声を上げることが非常に困難です。しかし、周囲の人間が「あの指導者の態度は不適切だ」「必要なコミュニケーションが取られていない」と気づき、組織に情報を上げる仕組みが機能していれば、被害の深刻化を防ぐことができます。

「怒鳴っていなければ問題ない」という古い価値観を組織全体でアップデートし、健全なコミュニケーションの欠如そのものをリスクとして捉える監視体制が、現代の組織には不可欠です。

雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:不作為を防ぐ客観的ガバナンス

指導放棄や人間関係からの切り離しを防ぎ、すべての職員が適切にサポートされる環境を構築するために、管理部門が整備すべき体制のポイントは以下の通りです。

  1. 「指導の放棄・不作為」をハラスメント規程に明文化する:
    暴言や暴力だけでなく、「業務上必要な指示を与えない」「意図的に無視をする」といった不作為も明確な懲戒対象であると社内規程に定め、全従業員に周知します。
  2. 多面的な評価と「第三者による環境監査」の導入:
    直属の上司だけの評価に依存せず、周囲の同僚からのフィードバック(360度評価)や、KCP等による定期的なヒアリングを通じて、コミュニケーションの機能不全を早期に検知します。
  3. 心理的安全性が担保された「外部通報ルート」の確立:
    被害者本人だけでなく、異変に気づいた周囲の人間が匿名性を保って安全に相談できるよう、社内の人事部から独立した外部の専門機関への通報窓口を設置します。

結語:コミュニケーションの質が組織を支える

上司と部下の関係において、「適切な指導を行い、成長を支援すること」は管理職としての最も基本的な職務です。個人的な感情や相性を理由にその職務を放棄し、部下を孤立させる行為は、組織の基盤を揺るがす重大なコンプライアンス違反と言えます。

今回の事案を教訓に、企業や組織は「何をしてはならないか」だけでなく、「何をしなければならないか」という責務を改めて管理職に徹底する必要があります。外部の客観的な目線を取り入れ、風通しの良いコミュニケーションが保証される健全な職場環境づくりを社会全体で推進してまいりましょう。

ハラスメントのない健全な職場環境をつくるために

「無視をする」「指導を行わない」といった不作為のハラスメントは、目に見えにくく、加害者自身も無自覚であることが多いため、組織内部の自浄作用だけでは解決が困難なケースが多々あります。一般社団法人クレア人財育英協会では、ハラスメント撲滅のための啓蒙活動の一環として、不作為を含むハラスメントの客観的な判断基準の策定や、周囲の人間が安心して情報提供できる外部相談・監査体制の構築をサポートする専門家「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。

「目に見えにくいハラスメントを防ぐため、客観的な指導基準を整備したい」「被害の潜在化を防ぐ、独立した外部通報・監査体制を導入したい」とお考えの組織・企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。

【雇用クリーンプランナー資格取得について】詳細のお申し込みはこちら

お申し込みはこちら