2026.10.11
カスハラ対策で対応を制限するとき、従業員保護と公平な事実確認を両立
カスハラ対策で顧客への対応を制限するとき、従業員の安全と公平な事実確認をどう両立するのでしょうか。この記事では、その場の危険への対応と、その後の制限の範囲・期間・見直しを分けて検討する方法を整理します。
この記事の結論:カスハラ対策で従業員を守るために対応の中断や制限を検討するときは、その場の安全確保と、継続的に制限する判断を分けましょう。行為の記録、相手側の説明、制限の範囲や見直し方法をそろえることが、説明できる対応につながります。
- 要求の内容と、職員・従業員に向けられた言動を分けて確認する。
- 差し迫った危険への対応を、調査完了まで待たせない。
- 継続的な制限は、範囲・期間・代替窓口・再検討の方法を検討する。
三重県の会見対応を巡る報道、県と記者の説明は対立
伊勢新聞は10月10日、三重県が特定の記者の知事会見への出席を拒否していることを巡り、県が記者クラブに説明したと報じました。県は職員への言動と職員保護を理由に挙げる一方、記者側は事実関係を否定しているとされています。
本稿は、当該記者の言動をカスハラと認定したり、会見への出席拒否の適法性を判断したりするものではありません。行政の記者会見には取材や情報公開に関わる固有の論点があり、一般企業の顧客対応と同一に扱うことはできません。
その違いを踏まえたうえで、企業の対応制限を考える際には、従業員の負担や危険を受け止めることと、判断の根拠を丁寧に確認することを両立させたいところです。「苦情があった」という理由だけで、要求の中身や言動の確認を省かないようにします。
報道を踏まえ、企業で確認したい点を整理すると次のとおりです。以下は当協会の実務上の提案であり、報道された組織の実際の運用を示すものではありません。
| 確認する場面 | 見落としやすい点 | 整えたい対応 |
|---|---|---|
| 危険や強い負担がある | 調査が終わるまで一人で対応を続ける | 安全確保、交代、中断の判断を先に行う |
| 継続的な制限を検討する | 印象的な呼び方だけが記録に残る | 具体的な言動、日時、影響、相手の説明を確認する |
| 制限を通知・運用する | 期限や解除の条件が曖昧になる | 範囲、連絡手段、見直しの担当と時期を決める |
カスハラ対策の安全確保と対応制限を分けて考える
私たち一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメントのない健全な職場環境づくりを推進する立場として、現場の安全を優先しつつ、対応制限の判断を一人の担当者に任せきりにしないことを提案します。差し迫った危険への退避や交代と、その後も取引や連絡を制限する判断では、検討する時間軸と項目が異なります。
相手の説明を確認することは、被害を訴える従業員を再び直接対応させることと同じではありません。責任者や別の担当が文書などで確認する方法も考えられます。安全への配慮と、公平な確認を対立するものにしない設計が必要です。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:制限の内容を具体的に説明できるようにする
一般企業で対応制限を検討する際には、少なくとも次の点を確認します。業種や契約により個別の法的検討が必要になる場合があります。
- 行為と要求を分けて記録する
大声などの具体的な言動、継続時間、業務や従業員への影響を記録します。商品やサービスに関する指摘の内容も別に残し、改善すべき点がないか確認します。 - 必要な制限の範囲を検討する
担当者の交代、連絡手段の変更、一時的な中断など、必要な対応を検討します。制限の強さや期間を一律に決めず、安全上の事情と契約等を踏まえて判断します。 - 見直しの入口を残す
判断を見直す担当、時期、追加情報の受付方法を決めます。通知する内容は、相手が何を制限され、どこへ連絡できるか分かる形にし、従業員の個人情報は必要以上に伝えません。
カスハラ対策には対応制限の説明と見直しも必要
カスハラ対策では、現場が我慢を続けることを前提にしない一方、継続的な対応制限を曖昧な印象だけで決めないことが大切です。危険への初動と、その後の判断手順を分けて用意しましょう。
今回の報道の結論を一般企業にそのまま当てはめるのではなく、自社でどの情報を記録し、誰が判断し、どう再検討するかを考える材料にできます。従業員への支援も、対応制限の通知だけで終わらせず継続します。
現場で使えるハラスメント対策を学ぶ
一般社団法人クレア人財育英協会では、職場のハラスメント防止に取り組む雇用クリーンプランナーの育成・認定を通じ、企業の継続的な職場環境づくりを支援しています。
相談対応や予防教育を担う人材を育て、社内の対策を実務につなげたいとお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。
