2026.10.09

カスハラの実態調査、相談件数だけでは見えない負担を職場の改善につなぐ

この記事の結論:カスハラの実態調査では、相談窓口に届いた件数だけで職場の状況を判断しないことが大切です。経験した人数、出来事の内容、相談の有無を分けて聞き、回答者が特定されない集計と、結果を改善へ戻す手順を用意します。

  • 高知県のアンケートでは、直近1年にカスハラと思われる行為を受けた職員が491人いたと報じられました。
  • この数字は相談件数でも、個々の行為を法的に認定した件数でもありません。
  • 回答数の増減だけで成功・失敗を判断せず、相談のしやすさや対象の変化も確認します。

高知県の報道を、カスハラの実態調査の読み方につなげる

高知さんさんテレビは10月8日、高知県が知事部局の約4,200人を対象にアンケートを行い、約3,600人が回答したと報じました。このうち491人が、直近1年間にカスハラと思われる行為を受けたと回答したとされています。

この結果から考えたいのは、窓口の受付記録とアンケートは異なる情報を集めているという点です。一人が複数回相談する場合もあれば、困った経験があっても一度も相談していない場合もあります。両方の数字を比べる前に、数えている単位と期間をそろえる必要があります。

また、調査で不快な経験が挙がったことと、個別の法的な評価は区別します。実態調査は組織の改善に向けた手掛かりを得る手段であり、自由記述だけで特定の相手への処分を決めるためのものではありません。緊急の支援が必要な人が調査結果の公表まで待たなくてよいよう、別の相談経路も案内します。

報道を踏まえ、企業で確認したい点を整理すると次のとおりです。以下は当協会の実務上の提案であり、報道された組織の実際の運用を示すものではありません。

確認する場面 見落としやすい点 整えたい対応
被害経験を聞く 人数と出来事の回数を混同する 対象期間を明記し、経験の有無と頻度を分ける
相談状況を聞く 相談しない理由を本人の意識と決めつける 窓口の認知、相談への不安、利用しづらさを聞く
結果を共有する 少人数部署の回答者が推測される 公表単位を調整し、自由記述をそのまま配らない

数字が増えたときこそ、相談のしやすさも見る

私たち一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメントのない健全な職場環境づくりを推進する立場として、調査を部署間の順位付けに使うより、支援が届いていない場面を見つけるために使うことを提案します。「件数を減らす」だけを現場の目標にすると、報告しづらくなるおそれがあります。

同じ質問で継続調査をする場合も、回答者数、対象業務、対象期間が変わっていないか確認します。窓口の周知が進んだ結果、相談件数が増えることも考えられるため、増減だけで対策の効果を断定しないことが大切です。

雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:調査票を作る前に、結果の使い方を決める

以下は企業や団体で実態調査を設計する際の一般的な提案です。高知県の調査票や内部の運用を説明したものではありません。

  1. 回答の扱いを先に説明する
    匿名か記名か、閲覧できる人、保存期間、集計結果の利用目的を案内します。匿名調査でも、自由記述から個人が推測される場合に配慮します。
  2. 相談できなかった事情を拾う
    「忙しくて時間がない」「誰に相談すればよいか分からない」など、利用上の障害を把握できる聞き方にします。回答を強制して詳細を引き出さないようにします。
  3. 改善後に結果を返す
    調査から何を変えるか、誰が担当するかを決め、回答した職員に概要を知らせます。全要望に対応できない場合も、検討状況を伝えることが次の回答につながります。

調べた後に、現場へ何を返せるか

カスハラの実態調査は、数値を公表して終わりではありません。応援体制、相談時間、管理者の関与など、調査で見えた課題を具体的な改善へつなげる必要があります。

相談件数、経験した人数、対応に費やした時間を区別し、個人の情報を守りながら傾向を読みましょう。調査に答えたことが支援につながったと感じられる運用を目指すことが重要です。

現場で使えるハラスメント対策を学ぶ

一般社団法人クレア人財育英協会では、職場のハラスメント防止に取り組む雇用クリーンプランナーの育成・認定を通じ、企業の継続的な職場環境づくりを支援しています。

相談対応や予防教育を担う人材を育て、社内の対策を実務につなげたいとお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。

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