2026.06.17

「最高の成果」を労働環境の言い訳にしない。TBSグループの全役職員調査から学ぶ、ビジネスと人権の本質|一般社団法人クレア人財育英協会

この記事の結論:クリエイティブな成果や顧客満足を追求する業界ほど、過酷な労働や理不尽を必要悪として正当化しがちです。しかし、働く人の人権や安全を犠牲にして成り立つ成果は持続可能ではありません。組織の成長を担保するためには、内実を直視するデューデリジェンスと、例外を作らないガバナンスが不可欠です。

  • TBSグループの調査で判明した、約41%の長時間労働リスクと約28%のパワハラリスク
  • 派遣や外部スタッフを含む、サプライチェーン全体に広がる人権リスクの存在
  • 「挑戦」と「フェアな関係」を両立させ、組織を守るKCP(雇用クリーンプランナー)の視点

役職員の4割が長時間労働、3割がパワハラリスクを懸念する現実

TBSホールディングスは、グループの全役職員を対象に実施した「社内人権DD(デューデリジェンス)アンケート」の結果を公表しました。有効回答数は4,077件に上り、回答率は87.1%を記録しています。

調査結果によると、職場における人権リスクについて、回答者の約41%が「長時間・深夜労働」のリスクを、約28%が「パワーハラスメント」のリスクを「高い」または「やや高い」と感じていることが明らかになりました。さらに、取引先からのカスタマーハラスメントや、派遣スタッフを含む外部パートナーが直面している人権リスクの高さも指摘されています。

これを受け、同社は「人権環境を改善するための約束」を策定し、ハラスメントゼロの推進や業務負担の見直しに取り組む方針を示しました。

問題の核心:「良いものを作るため」という免罪符が組織を蝕む

メディアやエンターテインメント、クリエイティブ業界、あるいは最先端の技術開発を担う企業において、過酷な労働環境や厳しい上下関係は「素晴らしい成果を出すために必要なコストだ」と美化されてきた歴史があります。

今回のTBSの取り組みで評価すべきは、こうした業界の慣習や聖域から目を背けず、全社的なアンケートによって現実の数値を可視化した点です。「最高のコンテンツを作る」という神聖な目的があったとしても、そのプロセスで働く人が使い潰され、人権が軽視されていれば、それは単なる組織の搾取に過ぎません。成果の質の高さは、理不尽な労働環境を肯定する免罪符にはならないのです。

民間企業への警鐘:社外のパートナーを切り捨てる組織に未来はない

このニュースでもう一つ注目すべきは、派遣スタッフなどの外部スタッフにおける人権リスクへの懸念です。自社の正社員の環境だけを整え、最も負荷のかかる深夜労働や泥臭い業務を外部のパートナーや下請け企業に押し付けて「うちはクリーンな職場です」と強弁する企業は少なくありません。

しかし、現代のコンプライアンスにおいて、人権の尊重は自社内だけで完結するものではありません。サプライチェーン全体で関わるすべての人をフェアに扱うガバナンスがなければ、告発リスクや人材の離職を招き、最終的には企業価値を大きく失墜させることになります。

雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:「幸福な挑戦」を支える3つのガバナンス

TBSグループが掲げた「挑戦は果敢に、関係はフェアに」という指針を形骸化させず、実効性のあるものにするために経営層が取るべきアプローチは以下の通りです。

  1. 定期的な人権デューデリジェンスの制度化:
    ハラスメントや過酷な労働は、現場の熱意の裏側に隠れて見えなくなりがちです。年に一度など、匿名性を担保した悉皆調査を仕組み化し、経営層が常にリアルなリスク数値を把握できる体制を整えます。
  2. 「社外スタッフ」も含めた共通の行動規範の適用:
    雇用形態にかかわらず、同じ現場で働くすべての人がハラスメントの相談窓口を利用できる仕組みなど、サプライチェーン全体を包括するフェアなルールを明文化します。
  3. 人員不足の解消と業務プロセスの可視化:
    ハラスメントの温床となるのは、慢性的な過密労働と人員不足です。「頑張り」に依存する進行管理を改め、業務量に応じた適切な人員配置をシステム側でコントロールします。

結語:人が原動力だからこそ、関係はフェアでなければならない

TBSの社長がコメントした通り、企業の使命を支える最大の原動力は「人」です。新たな価値や創造性は、恐怖や疲弊から生まれるものではなく、安心して挑戦できる健全な土壌からこそ湧き出ます。

人権環境の改善は、決して現場の勢いを削ぐための規制ではありません。全員が誇りを持って能力を発揮し、持続可能な形で成果を上げ続けるための投資なのです。大義名分の下に隠れた歪みにメスを入れ、真にフェアな組織を設計することが、これからの経営の本質です。

ハラスメントのない健全な職場環境をつくるために

「素晴らしい成果を出すため」「業界の当たり前だから」という言い訳の中に、決定的な人権リスクが潜んでいます。一般社団法人クレア人財育英協会では、自社だけでなくサプライチェーン全体のリスクを見つめ直し、持続可能でクリーンな労働環境を設計する専門家である「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。

「業界特有の過酷な労働環境を是正したい」「社員も外部スタッフも安心して働ける基準を作りたい」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。

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