2026.07.16

TBS『VIVANT』監督のパワハラ認定に見る「エースの聖域化」。実績とコンプライアンスの矛盾を突くガバナンス|一般社団法人クレア人財育英協会

この記事の結論:TBSが看板ドラマの監督によるパワハラを認定した事例は、特定のエース人材への権力集中が引き起こすガバナンス不全の典型です。調査期間中に監督を現場から離脱させた「物理的隔離」は被害者保護として正当な措置ですが、ハラスメント認定後も「本人の反省」を理由に早期復帰させる対応は、売上(視聴率)至上主義による加害者の聖域化と言わざるを得ず、組織の自浄作用に疑問を残します。

  • TBSが日曜劇場『VIVANT』第2シーズンの福澤克雄監督によるハラスメントを認定し人事措置を実施
  • 適正な調査を進めるため、一時的に監督を撮影現場から離脱させた組織の初動対応
  • エース級人材の属人的な権力を解体し、冷徹な監査システムを構築するKCP(雇用クリーンプランナー)の視点

名物監督のパワハラ認定と、調査中の一時離脱措置

TBSは、看板ドラマである日曜劇場『VIVANT』の制作過程において、福澤克雄監督にパワーハラスメントに該当する言動があったことを認定し、厳正な人事上の措置を行ったと発表しました。

局側の対応として注目すべきは、申告を受けて適正な調査を進めるため、監督を一時的に撮影現場から離脱させたという点です。これは、加害者とされる絶対的な権力者を被害者や証人から引き離すことで、証拠隠滅や口裏合わせ、さらなる威圧を防ぐための実務上正しい「物理的隔離」のプロセスと言えます。一方で、認定後には「本人は反省し、現在番組制作にあたっている」としており、ここから読み解くべきガバナンス上の課題は以下の通りです。

組織の対応と事実関係 ガバナンス上の評価と課題 法務・労務リスクの所在
調査中の現場からの引き離し 加害者とされるトップを現場から一時的に排除した初動の判断。 被害者保護と公正な調査のための適切な安全配慮義務の履行として評価できる。
絶対的権力者のハラスメント 大ヒット作を生み出す「名物監督」への権力集中が引き起こした暴走。 業績や才能に依存するあまり、周囲が諫言できない「密室化・治外法権化」のリスク。
反省を理由とした早期復帰 パワハラ認定・人事措置後も、看板番組の制作にそのまま復帰させている現状。 「実績があれば反省で許される」というエースの聖域化であり、再発防止の形骸化を招く。

問題の核心:ヒットメーカーを「聖域化」する組織の腐敗

企業の人事や経営層がこのニュースから学ぶべき教訓は、圧倒的な実績を誇る「エース」や「スター社員」に対して、組織がどこまで冷徹にルールを適用できるかという点です。

映像制作の現場において、監督は配役から演出まで全ての生殺与奪を握る絶対君主になりがちです。特に過去に大ヒットを連発している人物であれば、周囲のスタッフや局の上層部ですら意見を言うことができず、現場は容易にブラックボックス化します。今回のTBSの対応は、パワハラを認定し処分を下した点では一歩前進ですが、結果的に「番組の成功に不可欠だから」と元のポジションに戻してしまえば、被害者や現場のスタッフに「結局、会社は売上(視聴率)のために加害者を選ぶのだ」という強烈な絶望感を与えることになります。

民間企業への警鐘:業績トップの営業マンを罰せられるか

これはテレビ局に限った話ではありません。民間企業においても、「あの部長は売上のトップランナーだから」「彼が辞めたらプロジェクトが回らないから」という理由で、エース社員のパワハラや暴言を黙認しているケースは山のようにあります。

しかし、一人のエースを特別扱いし、ルールの適用を歪めた瞬間、組織のコンプライアンスは完全に崩壊します。ハラスメントを容認する企業からは、まともな感性を持った優秀な若手から順に離職していきます。目先の売上を守るためにエースを聖域化することは、中長期的な組織の死を意味するのです。

雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:権力集中を解体する監視システム

エース級人材の暴走を防ぎ、誰であっても特別扱いしない健全な労働環境を維持するために経営層が導入すべき3つの仕組みは以下の通りです。

  1. 調査期間中の「物理的隔離ルール」の明文化:
    ハラスメントの通報があった際、加害者とされる人物の役職や重要性に関わらず、即座に現場(被害者)から引き離し、自宅待機等を命じるプロセスを就業規則に定めます。
  2. 権限の分散化(マトリクス統治)の徹底:
    一人の監督や部門長に人事権や評価権限を集中させず、複数の責任者や外部監査部門がクロスして評価・承認を行う体制を構築し、密室での権力乱用を防ぎます。
  3. 復帰後の継続的な「第三者モニタリング」の義務化:
    ハラスメント認定を受けた社員を元の業務に復帰させる場合、本人の反省文だけで終わらせず、その後一定期間、外部の専門家や独立した人事部が現場の状況を抜き打ちで監査するシステムを導入します。

結語:実績よりもルールを優先する冷徹な覚悟

才能や実績は、他者の尊厳を傷つけて良い免罪符にはなりません。組織が真に守るべきは、特定個人の才能ではなく、そこで働くすべての人間が安心して力を発揮できるフェアなシステムです。

「この人がいなければ回らない」という属人的な思い込みを捨て、どれほどの実績を持つエースであってもルール違反には冷徹な処断を下すこと。その痛みを伴う覚悟を持てない経営者に、現代のコンプライアンスを語る資格はないのです。

ハラスメントのない健全な職場環境をつくるために

業績トップのエース社員や名物幹部に対するハラスメント対応は、社内の力関係や忖度が働きやすく、ガバナンスが最も機能しにくい領域です。一般社団法人クレア人財育英協会では、属人的な権力集中を防ぎ、外部の客観的な視点で調査と処分を実行する専門家である「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。

「エース社員の暴走を止める明確なルールを作りたい」「ハラスメント調査中の正しい隔離措置を導入したい」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。

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