2026.07.06
10月施行の改正法で問われる顧客からの「SOGIハラ」。形だけの多様性アピールを排する冷徹なガバナンス|一般社団法人クレア人財育英協会
この記事の結論:2026年10月1日に施行される改正労働施策総合推進法により、SOGI(性的指向・性自認)に関するハラスメントは、社内の人間関係だけでなく「顧客や取引先からのカスハラ」としても事業主に防止措置が義務付けられます。啓発ポスターを貼るだけの「やってる感」から脱却し、顧客によるアウティングや差別から従業員を法的に守り抜く、実効性のある防衛システム(契約解除ルール等)の構築が急務です。
- 10月のカスハラ防止措置義務化を前に、LGBT法連合会が「SOGIハラ」啓発キャンペーンを開始
- 厚生労働省の指針でも、顧客からのSOGIに関する暴露(アウティング)や侮辱的言動が明確にカスハラと規定
- 多様性の尊重を綺麗事で終わらせず、理不尽な顧客を排除するKCP(雇用クリーンプランナー)の視点
10月施行の改正労働施策総合推進法と「SOGIハラ」の対象拡大
2026年10月1日からのカスタマーハラスメント防止措置の義務化(改正労働施策総合推進法)を前に、LGBT法連合会はSOGIハラスメントの防止・啓発キャンペーン「それ、SOGIハラって知ってますか?」を開始しました。
SOGIハラスメントとは、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関する嫌がらせを指します。今回の法改正で最も留意すべきは、従来から義務付けられていた「労働者間」のハラスメント防止に加え、「顧客や取引先からのSOGIハラ」についても、事業主が労働者を守るための防止措置を講じなければならなくなったという点です。厚生労働省の指針に基づく具体的なリスクは以下の通りです。
| ハラスメントの類型 | 顧客・取引先から想定される具体的な加害行為 | 企業が負う法的な防止義務とリスク |
|---|---|---|
| アウティング(暴露) | 顧客が従業員のSOGIを本人の同意なく第三者やSNS等に暴露・拡散する行為 | プライバシー権の重大な侵害。企業が放置すれば安全配慮義務違反に問われる。 |
| 差別的・侮辱的な言動 | 「男(女)のくせに」「気持ち悪い」等、SOGIを理由とした顧客からのクレームや罵倒 | 厚労省指針の「社会通念上許容される範囲を超えた行為」に直結するカスハラの典型例。 |
| 性別の強要 | 本人の性自認を無視し、戸籍上の性別での接客や言葉遣いを執拗に強要する行為 | 精神的な攻撃に該当。従業員のメンタル不調や離職を引き起こす深刻な人権侵害。 |
問題の核心:啓発ポスターを貼るだけの「やってる感」が従業員を追い詰める
多くの企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」や「LGBTQ+への理解」といったスローガンを掲げています。しかし、人事や経営層が直視しなければならないのは、社内に綺麗なポスターを貼ったり、啓発セミナーを実施したりするだけでは、現場で対峙する「顧客からの悪意」は決して防げないという事実です。
例えば、接客業や営業の現場で、顧客から従業員の性自認に対する侮辱的な言葉を投げつけられたとします。その際、企業側が「お客様の価値観もあるから上手くかわして」「波風を立てないように対応して」と現場に我慢を強いるのであれば、その企業が掲げる多様性は単なるファッション(自己満足)に過ぎません。従業員にとって、加害者である顧客よりも、自分を守ってくれない組織(会社)の不作為こそが最大の絶望となるのです。
民間企業への警鐘:多様性の尊重は、顧客と戦う覚悟である
2026年10月以降、顧客からのSOGIハラを「個人のトラブル」として放置する企業は、明確な法令違反とみなされます。多様性を尊重するということは、多様な人材を採用することではなく、彼らが理不尽な差別に晒された際に、組織が盾となって戦うことを意味します。
社会には様々な価値観がありますが、企業が守るべきは「差別的発言を繰り返すクレーマーの売上」ではなく、「自社で働く従業員の尊厳と安全」です。この優先順位をシステムとして担保できない企業に、コンプライアンスを語る資格はありません。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:SOGIハラを撃退する契約ガバナンス
顧客からのSOGIハラを防ぎ、10月の法改正に完全対応するために経営層が講じるべき3つの仕組みは以下の通りです。
- 利用規約等への「SOGIハラ解除条項」の明記:
店舗の掲示やサービスの利用規約、取引先との契約書に「性的指向や性自認に関する差別的言動やアウティングを行った場合、即時に取引・サービス提供を停止する」と明記し、排除の法的根拠を確保します。 - 「アウティング・差別」をトリガーとする対応打ち切りルールの策定:
現場の従業員がSOGIに関する侮辱を受けた場合、その時点でクレーム対応を強制終了し、店長や法務部門が引き継いで警察や弁護士との連携に移行するエスカレーションマニュアルを整備します。 - 当事者の意向を絶対とする保護プログラム:
SOGIハラが発生した際、本人のカミングアウトの状況(誰にどこまで知られているか)を細心の注意で確認し、意に反した配置転換や社内への情報共有(二次アウティング)を厳格に防ぐプロセスを構築します。
結語:綺麗事を捨て、システムで防波堤を築け
「それ、SOGIハラって知ってますか?」という啓発は、社会全体の理解を深めるための重要な第一歩です。しかし、企業の経営層がそこで思考を止めてはなりません。
知っているかどうか、という個人のモラルに依存するフェーズは終わりました。顧客からの差別や暴力を「カスハラ」として明確に定義し、従業員を守るための冷徹なルールとシステムを実行に移すこと。それこそが、法改正を迎える現代の企業に求められる真のダイバーシティ推進なのです。
ハラスメントのない健全な職場環境をつくるために
2026年10月の改正法により、顧客からのSOGIハラスメント対応は企業の法定義務となります。一般社団法人クレア人財育英協会では、啓発レベルにとどまらず、利用規約の改定や対応打ち切りマニュアルの策定など、実効性のある防衛システムを構築する専門家である「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。
「10月の義務化に向けて、顧客対応のルールを法的に整備したい」「形だけの多様性推進から脱却したい」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。
