2026.09.18

海上保安部職員が部下への暴言・頭をたたく行為でパワハラ懲戒処分|「本人以外の申し出」でしか発覚しない職場をどう変えるか|一般社団法人クレア人財育英協会

この記事の結論:水島海上保安部に勤務していた男性職員(41歳)が、2026年9月18日付で「減給3カ月10分の1」の懲戒処分を受けました(KSB瀬戸内海放送が9月18日に報道)。行為は2025年9月から11月にかけて部下3人に対して行われ、発覚のきっかけは被害を受けた本人ではなく、2025年12月の「関係者からの申し出」でした。企業が学ぶべきは、暴言や身体的な接触を伴う言動が数カ月続いても本人が声を上げられない構造そのものであり、相談窓口の実効性と、事実確認の手順をあらかじめ決めておくことです。

  • 整備作業中に質問に答えられなかった部下2人への暴言・名誉毀損・侮辱にあたる発言、訓練中にミスをした部下1人の頭部を脱いだ手袋でたたくなどの行為が報じられた。
  • 行為は2025年9月から11月、申し出による発覚は同年12月、処分は2026年9月18日付。事実確認から処分までには相応の時間がかかっている。
  • 2026年10月1日からはカスタマーハラスメント対策と求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置が全事業主の義務となる。社内のハラスメント対応体制を点検するタイミングが重なっている。

ニュースの詳細:3カ月続いた言動と、申し出から処分までの時間

KSB瀬戸内海放送が2026年9月18日に報じたところによると、当時水島海上保安部に勤務していた41歳の男性職員が、2025年9月から11月の間、部下3人に対してパワーハラスメントにあたる行為を行ったとして、9月18日付で「減給3カ月10分の1」の懲戒処分を受けました。

報道によれば、認定された行為は二つの類型に分かれます。一つは、整備作業中に質問に答えられなかった部下2人に対する、暴言や名誉毀損、侮辱にあたる発言です。もう一つは、訓練中にミスをした部下1人に対し、脱いだ手袋でヘルメットの上から頭部をたたくなどの行為でした。言葉によるものと、身体的な接触を伴うものの両方が含まれている点が特徴です。

発覚の経緯として報じられているのは、2025年12月に関係者からの申し出があったという事実です。被害を受けた本人が最初に声を上げたとは報じられていません。水島海上保安部の端山真輔部長は「国民の皆様の信頼を失う行為」と述べ、再発防止を徹底しハラスメントのない職場づくりに努める方針を示したと伝えられています。

報道された事実関係を、企業が自社に置き換えて考えるための観点で整理すると、以下の通りです。

報道された事実 内容 企業・現場への示唆
行為の内容 質問に答えられなかった部下2人への暴言・名誉毀損・侮辱にあたる発言と、ミスをした部下1人の頭部を脱いだ手袋でたたくなどの行為。 「指導」と「ハラスメント」の境界は、現場の感覚任せでは判断できない。身体に触れる行為や人格に向かう言葉は指導の手段になり得ないことを、明文で示す必要がある。
行為の期間 2025年9月から11月にかけて、複数の部下に対して行われた。 単発ではなく続いていた点が重要。周囲が気づきながら止まらない状態は、個人の問題ではなく職場の仕組みの問題として扱うべき局面である。
発覚の経緯と処分 2025年12月に関係者からの申し出で発覚。2026年9月18日付で減給3カ月10分の1の懲戒処分。 被害を受けた本人が直接相談しにくい構造がうかがえる。窓口の存在だけでなく、第三者からの申し出も受け付ける導線と、事実確認の手順の整備が求められる。

協会としての見解:処分は結果であって、目的ではない

私たち一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメントのない健全な職場環境づくりを推進する立場として、今回の報道で最も重く受け止めるべき点は処分の重さではなく、行為が数カ月続いたあと、被害を受けた本人以外の申し出によって表に出たという経緯だと考えています。組織が事実を確認し処分を公表したことは一つの前進ですが、それは被害が生じたあとの対応であり、本来目指すべきは、最初の一回で止まる職場です。

ミスを指摘する場面は、どの職場にもあります。問題は、指摘の中身ではなく手段です。人格を否定する言葉や、頭に触れるような行為は、技能の習得にも安全にも結びつきません。それでもこうした行為が残るのは、多くの場合、当事者が「厳しい指導」と信じているからであり、周囲も「あの人はそういう人だ」と受け流してしまうからです。組織として何が許されないのかを言葉にし、誰が見ても同じ基準で判断できる状態をつくることが、個人の資質に頼らないための現実的な方法です。

雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:本人が声を上げなくても止まる仕組みをつくる

本人からの申告を待つ体制では、発見が遅れます。企業が優先して整えるべきポイントは以下の通りです。

  1. 身体的な接触と人格攻撃を「指導ではない」と明文化する:
    頭や肩に触れる、物を使ってたたく、能力や人格を否定する発言などを、指導の手段として認めない行為として就業規則や行動基準に具体的に書き出します。抽象的な禁止ではなく、現場で起こりやすい場面に沿った例示が、判断のぶれを減らします。
  2. 第三者からの申し出を受けられる導線を用意する:
    被害を受けた本人が動けない状況は珍しくありません。同僚や他部署の管理職が気づいた段階で相談できる窓口と、相談者・通報者が不利益を受けない取り扱いを明示しておくことで、発見の時期を早められます。
  3. 事実確認の手順をあらかじめ決めておく:
    誰が、どの順番で、どこまで聞き取るのか。記録の残し方、当事者の引き離し、中立性の確保をルール化しておきます。手順が決まっていない組織ほど確認に時間がかかり、その間に相談者が孤立しやすくなります。外部の専門家と連携できる体制を持つことで、社内の力関係から距離を置いた確認が可能になります。

結語:止めるのは勇気ではなく、仕組み

声を上げられなかった人を責めることはできません。相手が上司で、評価も配置も握られている状況では、黙って耐えるという選択にも理由があります。だからこそ組織の側が、本人の勇気に頼らずに済む仕組みを用意する必要があります。窓口をつくること、第三者からの申し出を受けること、手順を決めておくこと。そのどれもが、誰かが限界を迎える前に働く装置です。

2026年10月1日には、カスタマーハラスメント対策と求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置が全事業主の義務となります。社外からの言動と社内の言動は、相談を受ける窓口も、事実を確認する手順も、多くの部分を共有します。義務化への対応を機に、社内のハラスメント対応体制をあわせて点検しておくことが、結果的に確実な備えになります。

「指導」と「ハラスメント」の線引きを、組織の基準として持つために

パワーハラスメントは、悪意のある人だけが起こすものではありません。熱心な指導のつもりが人格攻撃になっていた、周囲も止められなかった、という形で積み重なり、気づいたときには当事者も組織も大きな損失を負っています。一般社団法人クレア人財育英協会では、ハラスメント撲滅のための啓蒙活動の一環として、判断基準の明文化、相談窓口の運用、事実確認と再発防止の体制構築をサポートする専門家「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。

「管理職が指導の線引きに迷っている」「相談があったときに、誰がどう動くか決まっていない」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。

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