2026.09.15
三重県が全国初の罰則付きカスハラ防止条例案を提出。10月1日のカスハラ対策義務化を前に企業が整えるべき「従業員を守る仕組み」|一般社団法人クレア人財育英協会
この記事の結論:三重県は2026年9月14日、悪質なカスタマーハラスメント(カスハラ)に対し、知事の禁止命令に従わない場合に「50万円以下の罰金または拘留もしくは科料」を科す、全国初の罰則付きカスハラ防止条例案を県議会に提出しました(名古屋テレビ、共同通信などが報道)。可決されれば2027年4月の施行が予定されています。一方、国レベルでも改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から企業規模を問わず全ての事業主にカスハラ対策(雇用管理上の措置)が義務付けられます。条例による「悪質行為者への罰則」と、法律による「企業の防止措置義務」の両輪が動き出した今、企業は現場任せにせず、方針・相談窓口・対応手順を組織として整備することが急務です。
- 三重県が、長時間・繰り返しの謝罪や金銭要求などを「特定カスハラ」と定義し、禁止命令違反に罰則を科す条例案を提出した。
- 2026年10月1日から、全ての事業主にカスハラ対策の措置義務が課される(企業規模による猶予なし)。
- 罰則は「最後の手段」であり、企業には従業員を守る方針の明確化、相談体制、記録と事実確認の仕組みづくりが求められる。
全国初の「罰則付き」カスハラ防止条例案、その中身とは
三重県は2026年9月14日、県議会の本会議にカスタマーハラスメント防止条例案を提出しました。報道によると、条例案は「正当な理由なく長時間や繰り返しといった形態で金銭や物品、謝罪や面会を要求したり、大声を発して従業員に著しい不安を抱かせたりする行為」を「特定カスハラ」と定義し、みだらな言動や付きまといも対象に含めています。
特定カスハラを行った者が知事の禁止命令に従わない場合、捜査機関への告発を経て「50万円以下の罰金または拘留もしくは科料」が科される仕組みで、罰則を盛り込んだカスハラ防止条例は全国初となります。一見勝之知事は「悪質なカスハラ行為への禁止命令違反に罰則を科す全国初の条例となります。働く人が安心して働ける環境づくりに向けた取り組みを着実に進めていきます」と述べています。可決されれば、2027年4月から施行される予定です。また、県内の小規模事業者に対しては、録音・録画設備の導入を支援する方針も伝えられています。
カスハラをめぐる公的なルールは、自治体の条例と国の法律の両面で整備が進んでいます。それぞれの位置づけを整理すると以下の通りです。
| ルールの種類 | 主な内容 | 企業・現場への影響 |
|---|---|---|
| 三重県カスハラ防止条例案(2027年4月施行予定) | 「特定カスハラ」を定義し、知事の禁止命令に従わない行為者に50万円以下の罰金または拘留もしくは科料を科す(全国初の罰則付き)。 | 悪質な行為者への抑止力が強まる一方、禁止命令や告発の前提として、企業側の「記録」や「事実確認」の重要性が増す。 |
| 改正労働施策総合推進法(2026年10月1日施行) | 顧客等による、社会通念上許容される範囲を超えた言動で労働者の就業環境が害されることを防ぐため、事業主に雇用管理上の措置を義務付ける。 | 企業規模を問わず全ての事業主が対象。方針の明確化・周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応などが求められる。 |
| 東京都など先行自治体の条例(罰則なし) | カスハラの禁止を理念として掲げ、事業者や顧客の責務を定める。 | 社会全体の意識は高まったが、実効性は各企業の取り組みに委ねられている。 |
罰則ができても、従業員を守るのは「企業の仕組み」
私たち一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメントのない健全な職場環境づくりを推進する立場として、三重県の条例案が「悪質なカスハラは許されない」という社会的なメッセージを明確に示した点を評価しています。
ただし、罰則が適用されるのは、禁止命令に従わないといった限られたケースです。現場の従業員が日々直面する理不尽な要求や長時間の拘束、暴言から身を守るには、条例の施行を待つのではなく、企業自身が「どこからがカスハラか」「その場で誰がどう対応するか」「被害を受けた従業員をどう守るか」を事前に決めておく必要があります。特に、行政や警察に相談する段階では、いつ・誰が・何を言われ・どれくらいの時間続いたのかという客観的な記録が欠かせません。現場の担当者個人に判断と我慢を押し付ける状態は、10月1日以降、法的にも許されない状況になりつつあります。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:10月1日の義務化までに整えるカスハラ対策の要点
条例と法改正の両輪が動き出した今、企業が優先して整備すべきポイントは以下の通りです。
- 「従業員を守る」基本方針と判断基準の明文化:
どのような言動をカスハラとして扱い、会社として毅然と対応するのかを方針として定め、社内外に周知します。現場の担当者が「これは我慢すべきか」と迷わない基準を示すことが出発点です。 - 現場任せにしない「対応手順」と「記録」の仕組み:
対応時間の目安、上長への交代ルール、打ち切りの判断、録音・録画や対応記録の残し方を手順化します。記録は、条例に基づく行政対応や警察への相談、法的措置を検討する際の重要な裏付けになります。 - 被害を受けた従業員のケアと相談窓口の整備:
相談窓口を設けて周知し、相談者のプライバシー保護と不利益取り扱いの禁止を徹底します。社内で抱え込まず、KCPなど外部の専門家と連携できる体制を持つことで、再発防止まで一貫した対応が可能になります。
結語:「お客様は神様」から「働く人を守る社会」へ
顧客の声は企業にとって大切な財産です。しかし、社会通念を超えた要求や暴言によって従業員が心身をすり減らし、職場を離れていく状況は、企業の持続的な成長を根本から損ないます。三重県の条例案は、カスハラを「個人が耐えるべき問題」から「社会として許さない問題」へと位置づけ直す、大きな一歩と言えます。
10月1日の義務化はもう目前です。罰則の有無にかかわらず、すべての企業が組織として従業員を守る仕組みを整え、顧客と働く人が互いを尊重し合える健全な職場環境を、社会全体で築いてまいりましょう。
カスハラから従業員を守る、実効性のある職場体制をつくるために
カスタマーハラスメントは、顧客と従業員という立場の違いから被害が潜在化しやすく、現場任せの対応では従業員の離職やメンタルヘルス不調につながりかねない重大な経営リスクです。一般社団法人クレア人財育英協会では、ハラスメント撲滅のための啓蒙活動の一環として、カスハラ対応方針や判断基準の策定、相談窓口の運用、事実確認と再発防止の体制構築をサポートする専門家「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。
「10月1日の義務化に向けて、自社のカスハラ対応マニュアルを整備したい」「現場の従業員が安心して相談できる窓口と対応フローをつくりたい」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。
