2026.07.01

【社労士解説】ついに先送り不可!令和8年10月施行「同一労働同一賃金ガイドライン改正」の全貌と、企業が取るべき4ステップの実務対応|一般社団法人クレア人財育英協会

一般社団法人クレア人財育英協会は、令和8年10月1日に施行される「同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)」の大幅なルール変更に伴い、企業が直面する法的リスクと具体的な実務プロセスを徹底解説する最新動画を公開いたしました。今回の改正は、令和8年4月28日に公布・告示された「令和8年厚生労働省令第87号」および「厚生労働省告示第201~203号」に基づくもので、これまでの裁判例(最高裁判決等)の内容が全面的に反映された極めて重要な内容です。当協会の特定社会保険労務士・小野純が、10万円以下の過料(罰金)リスクから、賞与・退職金・各種手当・休暇における「不合理な待遇差」の是正方法までを網楽的に解説します。

▼ 本法改正に関する公式プレスリリースはこちらからご覧いただけます

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1. 雇入れ時「労働条件通知書」の明示事項変更と10万円以下の過料(罰金)

令和8年10月1日より、パートタイマーや有期雇用労働者を雇用する際、各人毎に書面で交付する「労働条件通知書」の明示事項に、新たな義務が課されます。従来の「昇給・退職手当・賞与の有無」や「相談窓口」の明示に加え、新たに【待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる】旨の記載が必須となります。

本改正に伴い、通知書内には「待遇の相違に関する説明窓口」として、具体的な担当部署名、担当者職名、連絡先まで明記することが求められます。この明示義務を怠るなどの違反があった場合、会社に対して10万円以下の過料(罰金)が科されるため、企業は施行前に必ずフォーマットのアップデートを行わなければなりません。

2. 最高裁判例を踏まえたガイドライン(告示)の主な改正内容

今回の法改正の核心は、同一労働同一賃金の法制化から5年が経過する中で蓄積された「裁判例」の基準が、国のガイドライン(告示)に正式に組み込まれた点です。正規と非正規の間に以下のような相違がある場合、支給目的や職務内容に照らして「相違に応じた均衡のとれた内容(金額・期間)」になっていなければ、不合理(法令違反)と判定されます。

対象項目 ガイドラインにおける不合理性の判断基準(※☆印は今回改正)
賞与・退職手当 ☆ 目的として「労務対価の後払い」「功労報償等」さまざまなものが含まれるが、これらの目的が妥当(該当)するにもかかわらず、職務内容や責任度合い等に応じた均衡のとれた内容(金額)を支給しない場合は不合理。
無事故手当 ☆ 正社員と非正規社員の間で、対象となる業務内容・職務内容が同じ場合には、パート・有期雇用労働者にも同一の手当を支給しなければならない。
家族手当 ☆ 契約更新を重ねて継続的な勤務が見込まれる場合、パート・有期雇用労働者に対しても正社員と同一の手当を支給しなければならない。
住宅手当 ☆ 転居を伴う配置変更の有無に応じて支給される場合など、手当の支給要件や目的に応じて、パート・有期雇用労働者にも正社員と同一の手当を支給しなければならない。
病気休職・休暇 契約更新して継続的な勤務が見込まれる場合、パート・有期雇用労働者に対しても正社員と同様の病気休職・休暇期間中の給与を保障しなければならない。
夏季冬季休暇 ☆ パート・有期雇用労働者に対しても、正社員と同様の休暇を付与しなければならない。
報償(永年勤続等)☆ 「一定の期間勤続した者に付与するもの」については、雇用形態に関わらず同様の報償を付与しなければならない。

3. 厚生労働省が示す「待遇差解消」における4つの絶対留意事項

不合理な待遇差を是正するにあたり、厚生労働省のリーフレット等では企業が陥りがちな対応について、以下の通り強く警鐘を鳴らしています。

  • 正社員の待遇引き下げによる格差解消の禁止:格差をなくすために正社員の基本給や手当をパート・有期の基準に引き下げるのではなく、パート・有期雇用労働者側の処遇改善を図るべきとされています。
  • 定年再雇用後の有期雇用労働者:「定年後の嘱託再雇用だから待遇が低くても直ちに不合理ではない」と安易に免責されるわけではありません。定年後であっても業務内容や責任の度合いが変わらない場合は、不合理と判定されるリスクがあります。
  • いわゆる「正社員人材確保論」の偏重禁止:「優秀な正社員の人材確保や定着を図る」という会社側の主観的な目的だけで、待遇差が直ちに合理的であると当然に認められるわけではありません。
  • 無期雇用フルタイム労働者への配慮:パート・有期雇用労働法の直接の対象外である「無期フルタイムの非正規社員」であっても、均衡の考慮にあたっては本ガイドラインの趣旨を考慮すべきとされています。

4. 「雇用管理の改善等に関する措置」の変更点(雇用管理指針の改正)

今回の改正では、ガイドライン(指針)において企業が取り組むべき雇用管理の改善措置についても、以下の通り具体的な方針が追加・厳格化されています。

  • 職業能力開発法の適用:職務に必要な職業訓練の実施や、教育訓練等の受講機会の援助に努めること。
  • 公正な評価による賃金決定:適切な評価や昇給を行うため、正社員と共通の賃金・評価制度の設置が望ましい。
  • 代表者選定の順守:就業規則の作成・変更時における、過半数代表者の選定要件等のルールを厳格に順守すること。
  • 福利厚生施設の便宜供与:パート・有期雇用労働者が、正社員と同じく各種施設を適切に利用できるよう配慮すること。
  • 話し合いの促進と意見聴取:労使間の話し合いの機会を確保し、アンケート等で非正規社員の意見を聴取する工夫を行う努力。
  • 改善等に関する情報の公表:正社員転換制度やその実績をパート・有期雇用労働者に明示する努力を行い、情報を公表することが望ましい。

5. 会社が今すぐ実行すべき「同一同一対応」4ステップ・17の手順

いよいよ先送りが許されなくなった本改正に対し、企業の人事労務担当者が現場で実践すべき具体的なロードマップです。

【STEP 1】現状把握・分析フェーズ(早期着手推奨)

  • 職務内容の棚卸:正社員・パート・契約社員の職務内容・責任・配置範囲を一覧化(ジョブマッピング)
  • 賃金体系の整理:基本給・手当・賞与・退職金などの支給基準を明文化
  • 福利厚生・教育訓練の整理:利用・受講対象を雇用形態別に確認
  • 不合理な待遇差の洗い出し:同一職務で支給・利用に差がある項目を抽出
  • 労使間の情報共有:労働者代表・労働組合との意見交換を実施

【STEP 2】待遇差の見直し・是正フェーズ(2026年夏までに完了目標)

  • 不合理な差の是正:通勤手当・食堂利用・教育訓練など、職務に関係しない差を解消
  • 賃金・手当の基準見直し:職務・能力・成果に応じた支給基準を設定
  • 賞与・退職金の支給方針検討:同一職務内容の非正規社員にも支給を検討
  • 教育訓練・福利厚生の共通化:職務遂行に必要な訓練・施設利用を全員に提供
  • 労使協定・就業規則の改定:改正法・指針に沿った内容に更新

【STEP 3】説明義務・文書整備フェーズ(施行直前までに完了目標)

  • 待遇差の説明書面作成:採用・契約更新時に交付する「待遇差説明書」を作成
  • 説明体制の整備:管理職・人事担当者への説明研修を実施
  • 労働者からの説明要求対応:要求時に即応できる文書・根拠資料(ハンドブック等)を準備
  • 記録・保存体制:説明書面・比較資料を保存(行政対応に備える)

【STEP 4】運用・フォローアップフェーズ(施行後)

  • 定期的な待遇差点検:年1回程度、職務・待遇の差を再確認
  • 労働者意見の収集:不満・要望をヒアリングし改善に反映
  • 行政指導・報告対応:労働局からの報告徴収・指導に備えた体制整備

6. 同一労働同一賃金に関するよくある疑問と回答

企業の人事労務担当者様から多く寄せられる、今回の法改正に伴う実務上の重要ポイントをQ&A形式で整理しました。

Q. 従業員から待遇差の説明を求められた際、口頭のみで説明することは可能ですか?

A. いいえ、口頭のみによる曖昧な説明は明確なルール違反(NG)となります。
今回のルール変更により、待遇差の説明は【資料を活用し、口頭により説明する】か、【説明すべき事項をすべて記載したわかりやすい内容の資料を交付する】かのいずれかの方法で行うことが義務付けられました。「就業規則の変更内容」や「説明用ハンドブック」など、客観的な証拠となる文字(資料)が存在しない状態での対応は法令違反となります。

Q. 従業員から直接説明の希望がない場合、会社は何も対応しなくて良いのでしょうか?

A. 雇用管理指針において、説明希望がない場合でも契約更新時等に「自主的に周知・交付することが望ましい」とされています。
トラブルを未然に防ぐため、企業は労働者からの請求を待つだけでなく、正社員と非正規社員の間の「待遇差の内容や理由」を記したわかりやすい資料をあらかじめ交付することや、「会社に対していつでも説明を求めることができる」という権利そのものを社内周知しておく努力義務(指針)が示されています。

7. 一般社団法人クレア人財育英協会の視点(当協会の役割)

今回の改正に企業が対応するための作業量は、これまでのハラスメント対策の比ではありません。まず「正規と非正規」の「職務内容、責任度合いの差」を職務記述書(ジョブディスクリプション)等により明確に区別・マッピングし、次に基本給や賞与、退職金、各種手当、休暇に及ぶすべての支給目的を明文化しなければならないからです。正規・非正規の双方に支給目的が妥当するのであれば、「合理的な差」をもって支給し、その内容を書式化して非正規の求めに応じて提示しつつ説明しなければなりません。この膨大かつ緻密な実務を自社内で内製化・推進できる存在こそが、当協会が育成する『雇用クリーンプランナー』です。ハラスメント予防の知識に加え、こうした高度な「労働法の知識・実務能力」を兼ね備えた有資格者を組織の中心に据えることで、企業は法改正に先回りし、罰金リスクを回避した本当の意味での「クリーンで持続可能な雇用環境」を構築することができます。


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