2026.07.15
【社労士解説】パートに退職金は払えない?令和8年「同一労働同一賃金」改正を乗り切る「退職時給の上乗せ」という裏ワザ|一般社団法人クレア人財育英協会
一般社団法人クレア人財育英協会は、令和8年10月1日施行の「同一労働同一賃金ガイドライン大幅改正」に伴い、非正規社員への「退職手当」対応に苦慮する企業の経営層・人事労務担当者向けに、現実的な解決策となる『退職手当の時給上乗せ手法』を解説する最新動画を公開いたしました。今回の改正で退職手当に関する不合理な待遇差の禁止が明文化されましたが、中小企業がパート全員に退職金制度をゼロから構築することは極めて困難です。当協会の特定社会保険労務士・小野純が、最初から諦めることなく、正社員の退職金原資を時給換算し、合理的にパートタイマーへ支給する具体的な計算式と実務テクニックを徹底解説します。
1. パート・有期にも退職手当が必要になる令和8年ガイドライン改正
令和8年10月1日に施行されるガイドライン改正により、「退職手当」の取り扱いが厳格化されます。退職手当の支給目的が「労務対価の後払い」や「功労報償」などとされている場合、長期間勤務しているパートタイマーや有期雇用労働者にもその目的が妥当するため、職務内容や責任の度合い等に応じた「均衡のとれた内容(金額)」を支給しない場合は不合理(法令違反)と判定されるリスクが極めて高くなりました。
2. 全員に退職金制度を作ることが「現実的に難しい」2つの理由
法律で求められているからといって、正社員と同様の退職金制度を非正規社員にも一律に適用しようとすると、企業は以下の壁に直面します。
- ① 莫大なコスト増と原資の不足:人数が多いパートタイマー全員に対し、退職時の一時金として数百万円単位の原資を新たに積み立てていくことは、中小企業の財務を大きく圧迫します。
- ② 労働時間のばらつきによる不公平感:パートタイマーは、週4日フルで勤務する人から、週1日・短時間だけ勤務する人まで様々です。単純に「勤続年数」だけで退職金を一律に設定すると、かえって労働者間で不公平が生じ、制度設計が非常に複雑かつ困難になります。
3. 【解決策】時給に退職金を上乗せする「退職時給」という裏ワザ
こうした課題をクリアするための合法かつ合理的なアプローチが、退職手当を将来の一時金ではなく、現在の時給に「退職時給」として前払い上乗せする方法です。以下のような計算式を用いることで、合理的な待遇差の是正が可能となります。
【具体例】退職時給の計算シミュレーション
- ■ ステップ1:正社員の退職金原資を時給換算する
例)正社員の中小企業退職金共済(中退共)の掛金平均が月10,000円の場合。
これを月間所定労働時間(例:160時間)で割ると、時間あたり約60円となります。 - ■ ステップ2:非正規社員の「職務・責任の割合」を算出する
例)正社員とパートタイマーとの間で、仕事の範囲や責任度合いを比較し、パートタイマーの職務割合を正社員の「50%」と評価・設定します。 - ■ ステップ3:時給に上乗せする金額を決定する
正社員の時間あたり原資(60円)× 職務割合(50%)= 30円
現在の基本時給に、この「30円」を退職手当相当額(前払い)として上乗せ支給することで、労働時間に応じた公平な支給が実現します。
4. 退職手当の時給上乗せに関するよくある疑問と回答
企業の人事労務担当者様から多く寄せられる、時給上乗せ手法の運用に関する重要ポイントをQ&A形式で整理しました。
Q. 時給に上乗せした場合、それが退職手当の代わりであることをどう証明するのですか?
A. 就業規則(賃金規程)への明記と、労働条件通知書での明確な区分表示が必須です。
基本時給に単に30円を足して「時給1,030円」としてしまうと、基本給なのか手当なのか客観的に判別できません。必ず賃金規程において「前払い退職金として退職時給を支給する」旨を定め、給与明細や労働条件通知書上でも「基本時給:1,000円/退職手当相当時給:30円」と項目を分けて支給・表示することで、法的なエビデンスとなります。
Q. 正社員も同じように「前払い(時給上乗せ)」に変更しても良いのでしょうか?
A. 可能です。ただし、正社員の不利益変更とならないよう十分な説明と同意が必要です。
制度をシンプルにするため、正社員の退職金制度を廃止し、全従業員を「前払い(給与上乗せ)方式」に統一する企業も増えています。しかし、正社員にとっては将来受け取るはずだった一時金がなくなる(または税制上のメリットが変わる)ため、労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。移行の際は丁寧な労使協議が不可欠です。
5. 報道関係者・メディア様向け個別取材・質問会のご案内
一般社団法人クレア人財育英協会では、令和8年10月施行の同一労働同一賃金ガイドライン改正対応をはじめ、最新の労働法改正やハラスメント防止対策に関するメディア関係者様からの取材・企画協力を随時承っております。
- ・内容:報道関係者・メディア・企業向け(個別取材・情報提供・コメント寄稿・各種手当見直しのシミュレーション提示)
- ・日時:随時対応(オンライン対応・電話取材可。貴社のスケジュールに合わせ柔軟に調整いたします)
- ・費用:無料
- ・備考:専門家(特定社労士)としての客観的なデータ提供や、実際に企業が直面している退職金制度改定の具体事例解説が可能です。
6. 一般社団法人クレア人財育英協会の視点(当協会の役割)
「パートに退職金なんて出せるわけがない」と最初から諦めるのではなく、今回ご紹介した「時給上乗せ」のように、現在の枠組みの中で可能な道を模索し、論理的な制度設計(ジョブマッピングによる責任度合いの数値化等)を行うことが企業に求められています。この難解なパズルを解き、現場に落とし込むことができる実務家こそが、当協会が育成する『雇用クリーンプランナー』です。ハラスメント予防の知見に加え、労働法に基づいた柔軟な賃金制度の再設計を推進できる有資格者を社内に配置することで、企業は法改正によるコスト増のショックを和らげ、すべての従業員が納得して働けるクリーンな環境を構築することができます。
