2026.07.14

【社労士解説】企業の処遇根幹にメス。令和8年10月施行「同一労働同一賃金ガイドライン」大幅改正の全貌と実務対応|一般社団法人クレア人財育英協会

一般社団法人クレア人財育英協会は、令和8年10月1日に施行される「同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)」のガイドライン(告示)大幅改正に伴い、企業が直面する処遇制度の見直しと法的リスクを徹底解説する最新動画を公開いたしました。今回の改正(令和8年厚生労働省令第87号、厚生労働省告示第201~203号)は、これまでの最高裁判決等の判断基準が網羅された極めて重い内容です。当協会の特定社会保険労務士・小野純が、「退職手当」や「家族手当」「夏季冬季休暇」など、新たに対象となる重要項目の不合理性判断基準と、企業が取るべき具体的な対応策を解説します。

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1. 令和8年10月施行、ガイドライン改正の背景と企業の危機感

同一労働同一賃金の法制化から5年が経過し、正規と非正規の不合理な格差は減少しつつあるものの、未だ不十分であると国は判断しています。この5年間に蓄積された重要な裁判例(最高裁判決等)の内容が現行のガイドラインには反映されていなかったため、今回の大幅改正によって正式に明文化されることとなりました。これまでは「手続面の整備」に焦点を当てていた企業も、いよいよ本格的に「賃金原資や手当そのものの見直し」という経営の根幹に関わる対応を迫られることになります。

2. 裁判結果を踏まえて新たに追加された主な「待遇差」の判断基準

今回の改正により、正社員とパート・有期雇用労働者との間で差を設けることが「不合理(法令違反)」と判定される具体的な項目と指針が以下の通り追加されました。

新たに追加された項目 ガイドラインにおける不合理性の判断基準
賞与・退職手当 支給目的として「労務対価の後払い」「功労報償等」さまざまなものが含まれますが、これらの目的が妥当(該当)するにもかかわらず、職務内容や責任度合い等に応じた「相違に応じた均衡のとれた内容(金額)を支給しない場合」は不合理とされます。
家族手当 契約更新を重ねて「継続的な勤務が見込まれる」場合には、パート・有期雇用労働者に対しても正社員と同一の手当を支給しなければならないとされました。
住宅手当 転居を伴う配置変更の有無など、手当の支給要件や目的に応じて、パート・有期雇用労働者にも同一の基準で手当を支給する必要があります。
無事故手当 対象となる業務内容・職務内容が同じ場合には、雇用形態に関わらず同一の手当を支給しなければなりません。
夏季冬季休暇 会社の所定休日以外の休暇として付与される夏季冬季休暇について、パート・有期雇用労働者にも正社員と同様の休暇を付与しなければならないと明記されました。
報償(永年勤続等) 「一定の期間勤続した者に付与するもの」については、パート・有期雇用労働者に対しても同様の報償を付与する必要があります。

3. 企業が犯しがちな是正時の「4つの絶対留意事項」

不合理な待遇差を解消するにあたり、厚生労働省のリーフレット等で強く警鐘を鳴らされている留意事項です。誤った格差是正は別の重大な労務トラブルを引き起こします。

  • 正社員の待遇引き下げによる格差解消の禁止:格差をなくすために正社員の基本給や各種手当をパート・有期の水準まで引き下げる手法は不適切であり、原則として非正規労働者側の処遇改善(底上げ)を図るべきとされています。
  • 定年再雇用者への安易な免責の否定:「定年後の嘱託再雇用だから待遇が低くても直ちに不合理ではない」とは認められません。定年後であっても業務内容や責任の度合いが変わらない場合は、不合理と判定されるリスクがあります。
  • いわゆる「正社員人材確保論」の偏重禁止:「優秀な正社員を確保・定着させるための手当だから非正規には出さない」という会社側の主観的な目的だけで、待遇差が直ちに合理的であると当然に認められるわけではありません。
  • 無期雇用フルタイム労働者への趣旨考慮:パート・有期雇用労働法の直接の対象外である「無期フルタイムの非正規社員」であっても、均衡の考慮にあたっては本ガイドラインの趣旨を考慮した適切な制度設計が望ましいとされています。

4. 会社が今すぐ実行すべき「同一同一対応」4ステップ・17の手順

手当や休暇の支給目的を明確にし、合理的なバランス(均衡・均等)を証明するため、企業の人事労務担当者が現場で実践すべき具体的なロードマップです。

【STEP 1】現状把握・分析フェーズ(早期着手推奨)

  • 職務内容の棚卸:正社員・パート・契約社員の職務内容・責任・配置範囲を一覧化(ジョブマッピング)
  • 賃金体系の整理:基本給・手当・賞与・退職金などの支給基準を明文化
  • 福利厚生・教育訓練の整理:利用・受講対象を雇用形態別に確認
  • 不合理な待遇差の洗い出し:同一職務で支給・利用に差がある項目を抽出
  • 労使間の情報共有:労働者代表・労働組合との意見交換を実施

【STEP 2】待遇差の見直し・是正フェーズ(2026年夏までに完了目標)

  • 不合理な差の是正:通勤手当・食堂利用・教育訓練など、職務に関係しない差を解消
  • 賃金・手当の基準見直し:職務・能力・成果に応じた支給基準を設定
  • 賞与・退職金の支給方針検討:同一職務内容の非正規社員にも支給を検討
  • 教育訓練・福利厚生の共通化:職務遂行に必要な訓練・施設利用を全員に提供
  • 労使協定・就業規則の改定:改正法・指針に沿った内容に更新

【STEP 3】説明義務・文書整備フェーズ(施行直前までに完了目標)

  • 待遇差の説明書面作成:採用・契約更新時に交付する「待遇差説明書」を作成
  • 説明体制の整備:管理職・人事担当者への説明研修を実施
  • 労働者からの説明要求対応:要求時に即応できる文書・根拠資料(ハンドブック等)を準備
  • 記録・保存体制:説明書面・比較資料を保存(行政対応に備える)

【STEP 4】運用・フォローアップフェーズ(施行後)

  • 定期的な待遇差点検:年 1 回程度、職務・待遇の差を再確認
  • 労働者意見の収集:不満・要望をヒアリングし改善に反映
  • 行政指導・報告対応:労働局からの報告徴収・指導に備えた体制整備

5. 同一労働同一賃金ガイドラインに関するよくある疑問と回答

企業の人事労務担当者様から多く寄せられる、今回のガイドライン改正に伴う重要ポイントをQ&A形式で整理しました。

Q. 正社員に支給している「退職金(退職手当)」を、非正規社員には一律「支給なし」とし続けることは違法になりますか?

A. 支給目的が非正規社員にも当てはまる場合、一律「支給なし」とすることは不合理(法令違反)と判定されるリスクが極めて高くなります。
就業規則等で退職金の目的が「長期勤続の報償」や「労務対価の後払い」などとされている場合、非正規社員であっても長年勤務している者にはその目的が該当します。そのため、職務内容や責任の重さの相違に応じた「バランスの取れた金額(比率等)」を算出して支給しなければ、合理的な説明がつかなくなります。

Q. 「家族手当」をパート社員にも支給しなければならないのは、どのようなケースですか?

A. 何度も契約更新を重ねており、将来的に「継続的な勤務が見込まれる」非正規社員がいるケースです。
新たなガイドラインでは、定着や長期勤務を期待して支給する家族手当について、継続勤務が見込まれる非正規社員に対しても正社員と同一の手当を支給することが義務付けられました。雇用形態という名称だけで一律に対象外とすることは認められません。

6. 報道関係者・メディア様向け個別取材・質問会のご案内

一般社団法人クレア人財育英協会では、令和8年10月施行の同一労働同一賃金ガイドライン改正対応をはじめ、最新の労働法改正やハラスメント防止対策に関するメディア関係者様からの取材・企画協力を随時承っております。

  • 内容:報道関係者・メディア・企業向け(個別取材・情報提供・コメント寄稿・各種手当見直しのシミュレーション提示)
  • 日時:随時対応(オンライン対応・電話取材可。貴社のスケジュールに合わせ柔軟に調整いたします)
  • 費用:無料
  • 備考:専門家(特定社労士)としての客観的なデータ提供や、実際に企業が直面している退職金制度改定の具体事例解説が可能です。

7. 一般社団法人クレア人財育英協会の視点(当協会の役割)

今回のガイドライン改正は、企業にとって過去最大級の労務コストインパクトをもたらす可能性があります。「手当や休暇を支給する目的」が非正規社員にも該当する場合、一律に対象外とすることができず、論理的かつバランスの取れた金額(均衡待遇)の算出や、規則の改定が必須となるからです。この極めて重大な制度設計を外部任せにせず、社内で主体的に推進できる存在こそが、当協会が育成する『雇用クリーンプランナー』です。ハラスメント予防の知識に加え、こうした高度な労働法の改正を正しく理解し、職務記述書(ジョブディスクリプション)等の作成を通じて「合理的な差」を書式化できる有資格者を社内に配置することで、企業は罰金リスクや労使トラブルを先回りで回避し、真にクリーンで持続可能な雇用環境へと進化させることができます。


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