2026.06.15
医療現場で横行する「外科ハラ」の異常性。大義名分が理不尽を正当化する組織の陥穽|一般社団法人クレア人財育英協会
この記事の結論:「命がかかっているから」という神聖な大義名分は、しばしば指導者の暴力や暴言を正当化する魔法の言葉として悪用されます。いかなる極限の現場であっても、暴力が成果を生むことはありません。大義名分による「治外法権」をなくし、理不尽を許さない客観的なガバナンスが必要です。
- 消化器外科医の約7割が経験している「外科ハラ(サージャンズハラスメント)」の実態
- 手術中の蹴りや頭突き、メスを投げつけるといった暴力が「熱心な指導」にすり替わる構造
- 特殊な環境を言い訳にせず、普遍的なルールを適用するKCP(雇用クリーンプランナー)の視点
消化器外科医の67%が経験。手術室にはびこる「外科ハラ」
医療現場において、外科手術中の暴力や暴言が「サージャンズハラスメント(外科ハラ)」として問題視されています。
日本消化器外科学会が実施したアンケート調査によると、過去10年間に何らかのハラスメントを受けた経験がある消化器外科医は67%、目撃した経験がある者は89%に上りました。その内容は、怒鳴りつけるといった暴言にとどまらず、手術中に足で蹴る、頭突きをする、手術器具やメスを投げつけるといった、一歩間違えれば犯罪となるような凄惨な暴力が含まれています。
これを受け、同学会は「ハラスメント根絶宣言」を発出し、外科業務に関するあらゆるハラスメント行為に反対する姿勢を打ち出しました。
問題の核心:「命を救うため」という大義名分が暴力を正当化する
企業の人事や経営層がこのニュースから学ぶべき本質は、ハラスメントが「大いなる目的」を盾にして正当化される恐怖です。
外科手術は緊迫した場であり、一瞬のミスが患者の命を奪います。加害側である指導医は「優しい言葉で指導している余裕などない」「命を救うための厳しさだ」と自らの行為を正当化します。しかし、手術中に誤った手技を止めるのに、メスを投げつけたり頭突きをしたりする必要は一切ありません。「待て、そこは違う」と端的に指示をすれば済む話です。
つまり、彼らは命を救うために暴力を振るっているのではなく、極限のストレス下で自身の感情をコントロールできず、決壊した怒りを「熱心な指導」という大義名分にすり替えて発散しているに過ぎないのです。
民間企業への警鐘:「うちの業界は特別だから」という甘えを捨てる
このような「大義名分によるハラスメントの肯定」は、医療現場に限った話ではありません。「うちはクリエイティブで最高の作品を作るから」「お客様の安全を守る絶対の使命があるから」と、自社の業務を神聖化し、その目的のためなら多少の理不尽も許されるという「治外法権」を作ってしまう企業は多く存在します。
しかし、どのような大義名分があろうと、暴力や暴言は若手を萎縮させ、パフォーマンスを低下させます。外科ハラが原因で外科志望の医師が減少し、医療崩壊の危機が叫ばれているように、理不尽を放置する組織からは優秀な人材が去り、最終的にはその大いなる目的すら達成できなくなります。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:大義名分に隠れた聖域を解体する
「特殊な現場だから」という言い訳を排除し、組織全体に普遍的なルールを行き渡らせるために経営層が講じるべきガバナンスは以下の3つです。
- 職人文化や特殊性を免罪符にしないトップメッセージ:
「どれほど高い技術を持ち、どれほど重要な業務を担っていようと、ハラスメント行為は一切容認しない」という強い姿勢を、例外なく全社員に適用します。 - 「指導」と「感情の爆発」を明確に区別する行動基準:
業務上必要な注意喚起と、人格否定や暴力(物を投げる等)の境界線を明文化し、大義名分へのすり替えをシステム的に防ぎます。 - 閉鎖空間に第三者の目を入れるモニタリング:
手術室や厨房、開発現場など、外部の目が届きにくい「密室」ほどハラスメントの温床になります。匿名での相談窓口を外部の専門家に委託するなど、権力が淀まない風通しを確保します。
結語:神聖な目的は、理不尽の言い訳にはならない
社会的に意義のある仕事や、極限のプレッシャーがかかる現場であるほど、そこに携わる人間は自制心を保つための強固な仕組みを必要とします。
ハラスメントをなくすことは、厳しさを捨てることでも、品質を下げることでもありません。大義名分によって作られた「理不尽の聖域」を解体し、誰もが本来の目的に集中できる健全な環境を設計すること。それこそが、命や安全を守る組織の真の責務なのです。
ハラスメントのない健全な職場環境をつくるために
「特殊な業務だから」という言い訳が通用する組織では、ハラスメントが潜在化し、取り返しのつかない人材流出を招きます。一般社団法人クレア人財育英協会では、業界の慣習や大義名分に流されず、客観的な基準で職場環境を改善する専門家である「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。
「自社の閉鎖的な環境にメスを入れたい」「職人文化とコンプライアンスを両立させたい」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。
