2026.05.08

求職者セクハラ対策とカスハラ防止が10月義務化。企業が採用現場で今すぐ直すべき「相談先・面接・SNS」|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】
厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針


求職者セクハラ対策とカスハラ防止が、ついに企業の義務になります

2026年10月1日から、求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置と、カスタマーハラスメント防止措置が事業主の義務になります。

ここで見落としてはいけないのは、今回の改正が「社内の人間関係」だけを対象にしていないことです。採用前の求職者も守る対象に入り、同時に、顧客や取引先から従業員を守ることまで企業の責任になりました。


採用は「選ぶ場」ではなく、企業が権力を行使する場だと法が認めた

これまで多くの企業では、採用は人事の業務、労務管理は入社後の話、と切り分けてきました。

ですが今回の改正で、その境界は崩れます。求職者は応募した瞬間から、その企業に対して構造的に弱い立場に置かれます。面接官、人事担当、リクルーター、OB・OG訪問対応者、インターン受け入れ担当。その誰かが立場の差を使って性的な言動に及べば、会社は「採用前だから関係ない」とは言えなくなります。


求職者等セクハラの対象は広い 面接だけでなくSNSやオンラインも含まれます

求職者等セクハラの対象になるのは、応募者、就活生、インターン生、内定者などです。しかも、企業説明会や面接だけではありません。

SNSやオンライン上のやり取り、OB・OG訪問、インターン、内定後の接触まで含まれます。つまり、業務時間外だった、個人的な連絡だった、オンラインだった、という逃げ道を先回りして塞いだ改正だということです。


企業に求められるのは、方針表明ではなく5つの実務です

企業は、求職者等セクハラについて、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、プライバシー保護と不利益取扱い防止、そして採用関係者への研修を進めなければなりません。

大事なのは、窓口を作るだけでは足りないことです。求職者が目にする場所に相談先を明示し、相談したことが採否や内定に影響しないことを制度として示し、実際に事案が起きた時に謝罪、懲戒、配置見直し、再発防止まで動けるかが問われます。


カスハラ対策との違いは「誰を誰から守るのか」です

今回、同時に義務化されるカスタマーハラスメント防止措置は、自社の労働者を、顧客や取引先など外部からの理不尽な言動から守るためのものです。

一方、求職者等セクハラは、社外の人を、社内の人間による性的な言動から守るための制度です。向きが逆です。だから、同じハラスメント対策でも、窓口の見せ方も、規程の置き方も、初動の組み立ても変わります。ここを雑に一つにまとめると、どちらも機能しません。


論点 会社が問われるのは「人を採る資格」があるかどうかです

採用とは、応募者を評価する行為です。ですが同時に、企業自身も見られています。どんなメールを送るのか、どんな面接官を立てるのか、どこまで私的接触を許すのか、相談が来た時にどう動くのか。

つまり今回の改正は、セクハラ防止だけの話ではありません。「人を採用する」という行為に伴う倫理と責任を、企業が法的に引き受けろという話です。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 採用は広報ではなく、労務の最前線です

この改正の厄介さは、規程を1本足せば済む話ではないことです。採用サイト、募集要項、面接官教育、OB・OG訪問、インターン、相談窓口、内定後対応まで全部つながっています。ここも運用で決まります。

次の一手は3つです。
①初動:採用に関わる接点を洗い出します。面接、説明会、インターン、OB・OG訪問、SNS連絡、内定後フォローまで含め、「どこで誰が求職者に接触するか」を可視化する必要があります。
②通報設計:求職者が見える場所に相談先を明示し、社内窓口だけでなく外部窓口も含めて整えます。不利益取扱い禁止は、規程に書くだけでなく、採用担当者の判断から切り離して初めて効きます。
③再発防止:採用関係者研修を義務にし、個人的連絡、私的な食事の誘い、深夜のDM、選考と引き換えのように見える言動を明確に禁止します。採用は会社の顔です。ここが壊れている企業は、入社後の職場もだいたい壊れています。


結語 採用の場に倫理を持ち込めない企業は、入社後も人を守れません

採用は、会社が一番きれいな顔をしている場です。そこですら、立場の差を悪用する余地を残していたなら、入社後の職場に期待できることは多くありません。

判断軸は単純です。求職者を「選ぶ対象」としてだけ見るのか、それとも守るべき相手として扱えるのかです。10月の義務化は、法改正というより、採用文化そのものの審判です。

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