2026.03.29
三重・松阪市の懲戒処分、市民病院の医師パワハラが示した「命の現場」の緩み|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】三重・松阪市、3人を懲戒処分 市民病院の医師はパワハラ
松阪市が3人を懲戒処分 市民病院の医師は減給10分の1・1カ月
三重県松阪市は3月27日、3件の事案で計3人を懲戒処分にしました。
このうち市民病院医療部の医師は、看護師2人に対するパワーハラスメントが認定され、減給10分の1・1カ月の処分となりました。市民病院の現場で起きた問題が、個人の感情ではなく組織の統治の問題として表に出た形です。
緊急処置の場で大声叱責 器具を床に放り投げた行為も認定
総務部職員課と病院事務部によると、この医師は2025年12月、入院患者の容態が急変し病棟で緊急医療処置を行う際、処置に使う医療器具が病棟に備え付けられていなかったことに立腹したとされています。
その際、看護師に対して大声で叱責し、ピンセットなどを床に放り投げるなどして心的ストレスを与えたと報じられています。命を扱う現場ほど緊張は高まりますが、それを理由に怒りを正当化してよいわけではありません。
別の看護師には「小学生ドリルをやり直したらどうだ」
さらに2026年1月には、別の看護師がミスをしたことに対し、複数の職員が同席する場で「小学生ドリルの勉強をやり直したらどうだ」などと侮辱的な表現を用いて大声で叱責したとされています。
問題なのは叱責の強さだけではありません。複数人の前で侮辱し、本人の能力や尊厳そのものを下げる形になっていたことです。
市は2件をパワハラ認定 年齢や性別の公表は見送る
市の担当課は、これら2件の行為をパワハラと認定したとしています。
そのうえで、再発防止に向けた取り組みを進めたいとしつつ、医師の年齢や性別については「特定されやすい」などの理由から公表を避けたと報じられています。処分を出すだけでなく、どう再発防止につなげるかが次に問われる局面です。
他の2件も戒告 嫌がらせと器物損壊で組織全体の緩みが露出
環境生活部では、48歳の係員男性職員が戒告処分となりました。この職員は2024年夏ごろから2026年2月までの間、特定の職員に対して持ち物を隠したり、食べ物を無断で食べたりするなど複数回の嫌がらせを行い、心的ストレスを与え、職場の安全性と秩序を著しく損なったとされています。
また、教育委員会事務局では、63歳の会計年度任用職員の男性が戒告となりました。2025年7月19日夜、JR津駅構内の券売機前面パネルを素手でたたいて壊し現行犯逮捕され、同11月に不起訴となった後、今回の処分に至ったと報じられています。
市長コメント 信頼回復は処分の数ではなく職場環境の改善で決まる
竹上市長は、いずれの行為も公務に携わる者としてあってはならず、市として極めて重く受け止めているとコメントしたとされています。
そのうえで、今回の処分を踏まえ、職場環境の改善、服務規律の徹底をはじめとする組織全体の再発防止を徹底し、市民からの信頼回復に努めたいと述べたと報じられています。ここで問われるのは、処分を出した事実より、現場の空気を変えられるかどうかです。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 医療現場の緊張を、暴力の免罪符にしない
この件の核心は、緊急対応の現場だったことではありません。緊迫した場面を理由に、大声、侮辱、物を投げる行為まで許されると組織が錯覚していたことです。処分だけでは戻らず、ここも運用で決まります。
次の一手は3つです。
①初動:大声叱責、物を投げる行為、公開の場での侮辱も一括して相談対象に含めます。違和感が出た時点で面談メモを残し、必要に応じて記録を固定し、医療安全とは別にハラスメント案件として即時にエスカレーションします。
②通報設計:看護師や若手職員が、評価や勤務への影響を恐れず相談できる窓口と内部通報を整え、不利益取扱い禁止を明文化します。命の現場ほど、上下関係を理由に沈黙が固定されやすいからです。
③再発防止:救急対応や緊急処置の場でも守るべき言動基準を具体化し、管理職と医師を含めた研修、職場アンケート、継続検証まで回します。心理的安全性と安全配慮義務は、平時だけ守ればよいものではありません。
結語 命を扱う現場で人を壊すなら、その技術は組織を支えない
緊急時の厳しさは必要です。ですが、厳しさと侮辱は別物です。器具を投げ、公開の場で相手を小学生扱いするなら、それは技術でも指導でもなく、立場を使った支配です。
判断軸は単純です。その言動が患者を守るためのものだったのか、それとも自分の苛立ちを処理するものだったのかです。医療現場の信頼は、腕だけでなく、追い詰められた時に誰を傷つけるかで決まります。
