2026.03.13

インシビリティで離職。ハラスメントグレーゾーン「ちょっとした無礼」が職場を壊す|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】ちょっとした「無礼」が離職を招く ハラスメントグレーゾーンの「インシビリティ」とは


インシビリティとは何か ハラスメント未満で終わらない無礼

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科の津野香奈美教授は、「インシビリティ」を礼節の欠如、無礼、配慮のなさと説明しています。

具体例として、あいさつを無視する、相手の意見に関心を示さない、特定の人だけ「おまえ」「~くん」「~ちゃん」と呼ぶ、話しかけるとため息をつく、といった行動が挙げられています。

ハラスメントは嫌がらせですが、インシビリティは悪意がないものも多いとされています。だから見逃されやすい一方で、受け手には「軽んじられている」という感覚だけが残ります。


インシビリティが離職を招く 頭痛や燃え尽きだけで終わらない

記事では、インシビリティがストレス性の頭痛や燃え尽き症候群など、心身の不調を引き起こすことが明らかになっていると紹介されています。

さらに、ある調査では、労働者の24%がインシビリティを理由に仕事を辞めたという結果が報告されています。

大きな事件がなくても、あいさつを返されない、意見を軽視される、顔を背けられる。そうした小さな無礼が積み重なると、働く意欲を削り、最終的に離職につながるという構図です。


パワハラ防止法の後に残った「グレーゾーン」

記事では、2020年の改正労働施策総合推進法の施行後、大手企業を中心にハラスメント基準が浸透し、明らかに加害性のある行動は減った一方で、インシビリティは増えていると実感していると語られています。

背景には、「パワハラの基準を満たさないなら対応しなくてよい」という発想があると指摘されています。グレーゾーンを放置すると、人は注意されない行動を繰り返し、同じ振る舞いが組織内で増えていくという説明です。

つまり、線を越えた時だけ止める運用では遅いということです。職場を壊すのは、明確な加害だけではありません。


ハラスメントからシビリティへ さらにリスペクトへ

津野教授は、まず目指すべきは「シビリティ」だと述べています。あいさつを返す、相手の話を聞く時に他の作業をしない、敬意を持った言葉を使う、といった最低限の礼節が土台になります。

その上にあるのが「リスペクト」です。相手の話を深く傾聴する、相手のために資料を整理する、相談に乗るなど、善意に基づく積極的な行動です。

記事では、リスペクトがある職場には心理的安全性があり、心理的安全性が高い職場にはイノベーションが生まれやすいという研究結果も紹介されています。逆に、無礼がある職場では、報告・連絡・相談の前に余計な不安が生まれ、仕事そのものに集中できなくなるとされています。


CREWプログラム 対話を仕組みに変える

インシビリティの改善策として、記事では「CREWプログラム」が紹介されています。2005年にアメリカで生まれた、職場の人間関係をより良くするための取り組みです。

アメリカやカナダを中心に、病院や郵便局、コールセンターなど1200以上の職場で実施されているとされています。従業員同士の対話を2週間に1回以上、半年間続けることで、お互いの価値観や不快に感じる基準を共有していく仕組みです。

記事では、CREWプログラムによってインシビリティが減ると、エンゲージメントや定着率が上がるだけでなく、病院では患者満足度まで向上した研究結果が示されています。


人事部門の役割 管理職を責める前に支援する

津野教授は、特に上司から部下へのインシビリティの悪影響が大きいと述べています。ため息をつく、部下の話に耳を傾けない、といった無礼な振る舞いが、部下に強いダメージを与えるからです。

その背景には、管理職自身の不安や焦りがあるとされています。部下との距離感がつかめない、指示がうまく伝わらないといった悩みが、不適切な言動として表に出るという見立てです。

そのため人事は、「評価が下がるかもしれない相談」ではなく、「一緒に解決策を考える支援」として関わることが有効だとされています。また、インシビリティを放置せず、「今の表現は配慮に欠ける」とフィードバックする管理職を支えることが重要だと語られています。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 ハラスメント未満を放置しない仕組みを先に作る

この問題の厄介さは、加害者が自覚しにくく、被害者も「これくらいで言っていいのか」と迷う点です。だから、処分待ちでは遅いです。ここも運用で決まります。

次の一手は3つです。
①初動:あいさつ無視、ため息、呼び方の差、意見の軽視といったインシビリティを、相談窓口や1on1で拾えるようにします。面談メモを残し、必要に応じて事実を記録し、小さな違和感の段階で介入します。
②通報設計:内部通報や相談ルートを、ハラスメント認定前でも使える状態にします。不利益取扱い禁止を明示し、「明確な被害が証明できないと動かない」構造を止めます。
③再発防止:組織として最低限の礼節ルールを明文化します。「全員をさん付けで呼ぶ」「基本的に敬語を使う」「話を聞く時は画面を見続けない」といった基準を置き、管理職支援と対話の仕組みまで含めて定着させます。


結語 離職は大きな事件で起きるのではなく、小さな無礼の蓄積で起きる

職場を去る理由は、いつも露骨な暴言とは限りません。軽く扱われた感覚、話を聞いてもらえない感覚、対等ではないと知ってしまう瞬間が、人を静かに削ります。

判断軸は単純です。職場が「ハラスメントかどうか」でしか動かないのか、それとも無礼の段階で止められるのか。離職を減らしたいなら、問題を大きくしてから処理するのではなく、小さな無礼を日常運用で潰すしかありません。

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