2026.02.23

福井県、知事も対象のハラスメント防止条例案。「止められないトップ」を止める仕組みは作れるか|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】全国初、知事対象のハラスメント防止条例案を提案 福井県議会


福井県がハラスメント防止条例案を提案、知事ら特別職も対象に

福井県は、杉本達治・前知事の県職員へのセクシュアルハラスメント事案を受け、ハラスメント防止条例案を県議会に提案しました。知事や副知事、教育長などの特別職を対象に含む条例が成立すれば、都道府県では全国初になるとされています。

条例案の対象は、知事ら特別職と一般職の間のハラスメントに加え、一般職同士のハラスメントも含まれます。「県庁の中だけの問題」にせず、県庁全体の行動変容まで射程に入れた設計です。


条例案の柱は「責務の明文化」──知事の配慮義務と副知事の改善要請

条例案では、知事ら特別職の責務として、自らの言動がハラスメントに該当しないよう常に配慮することや、防止に必要な措置を講じることを明記します。

さらに特徴的なのは、副知事の役割です。知事の言動がハラスメントに該当するおそれがある場合、副知事が知事に対して改善を求めなければならない、と規定します。ここは「誰がトップを止めるのか」という、制度の空白に踏み込んだ部分です。


第三者相談窓口と報告義務、公表──「見えない」を減らす仕掛け

条例案には「第三者相談窓口」の設置が盛り込まれ、申し出を受けた後の報告義務化も記されます。相談件数や知事らによるハラスメント行為の事案を公表することも定めるとされています。

ハラスメント対応で崩れやすいのは、事実認定そのものより「途中経過が消えること」です。窓口を作っても、握りつぶされる、先送りされる、本人が孤立する。条例案はそこに、外部性と可視化を持ち込もうとしています。


県議会は決議も全会一致──退職金と「県政運営の責任」に踏み込む

県議会では、県政の信頼回復に向けて速やかな体制刷新と再発防止策の整備を求める決議が、全会一致で可決されたとされています。杉本氏に支給された退職金についても、道義的観点から自主的な対応を検討するよう求めました。

また、杉本氏が報告書公表前に辞職したことについて「県民を欺いたとの批判は免れない」との指摘や、前知事とともに県政運営を担った副知事の責任の在り方にも言及したとされています。条例案と決議がセットで出ている点に、県としての「やり直し」の意志が見えます。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──トップハラスメントは「止める人がいない」から続く

トップによるハラスメントが厄介なのは、被害が起きても、止める役割の人が同時に萎縮するからです。人事権や予算、人事評価が集中すると、内部窓口は機能しにくくなり、外部窓口は「使うこと自体」が怖くなります。

今回の条例案が実効性を持つかは、条文の強さではなく運用の細部で決まります。例えば、副知事が改善要請を「いつ」「どの根拠で」「どの手順で」行うのか。第三者相談窓口の申し出が、誰に、どの期限で報告されるのか。公表の粒度をどう設計し、被害者保護と抑止を両立するのか。ここが曖昧だと、条例は宣言で終わります。


結語:条例は「正しさの掲示」ではなく、権力にブレーキをかける道具

ハラスメント対策で最も危ういのは、「意識改革」だけで済ませることです。権力に例外を許す組織は、必ず同じ場所に戻ります。

福井県の条例案は、知事を対象に含めた点で、象徴的な一歩です。次に問われるのは、止める仕組みが実際に止めるかどうか。制度を作るだけでなく、制度が作動する状態まで持っていけるか。そこが県庁の信頼回復の分岐点になります。

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