2026.10.24
相談を受けた上司のパワハラ、処分報道から考える最初の受け答え
相談を受けた上司に必要なのは、その場で白黒を決めることより、話を聞ける状態をつくることです。困っていること、安全、共有する相手、次の連絡を順に確認し、指導や反省の話を同じ面談へ混ぜないようにします。
頼りにして話した相手から、さらに責められる。相談する側にとっては、問題そのものだけでなく「もう誰にも話せない」というつらさが残りかねません。相談を受けた上司の対応は、その後の調査や職場の改善に入る前の、大切な入口です。
2026年10月22日のRCC中国放送の報道によると、広島市立病院機構は、相談してきた部下にパワハラに当たる言動を繰り返した係長級職員を、停職15日の懲戒処分としました。部下がハラスメント相談員に相談したことで発覚し、上司らにも管理監督が不十分だったとして厳重注意などが行われたと報じられています。
報道では具体的な発言内容までは確認できません。以下の会話は、この事案の発言を再現するものではなく、職場で相談を受けるときの受け答えを考えるための例です。
最初の質問を「なぜ」から「何が」に変える
部下から「もう一緒に働くのがつらいです」と言われた場面を考えてみてください。上司が事情を知りたいと思って「なぜ、もっと早く言わなかったの」と聞いても、相手には、相談が遅かった自分を責められているように響くことがあります。
「どんな場面でつらくなっていますか」「今、特に困っていることは何ですか」と、起きていることから聞く方が、話を続けやすくなります。日付や言葉の記憶が曖昧でも、最初から細部がそろうことを条件にしないようにしましょう。
話を受け止めることと、相手の説明をそのまますべて事実認定することは別です。「そう感じる出来事があったのですね。確認が必要な点を一緒に整理します」と伝えれば、つらさを否定せず、事実確認の余地も残せます。
| 急いで出やすい言葉 | 言い換えの例 | 聞きたいこと |
|---|---|---|
| なぜ今まで黙っていたの? | 今、話せる範囲で起きたことを教えてください | 出来事と現在の困りごと |
| 相手も悪気はないと思う | その場で、どのような言葉や行動がありましたか | 意図の推測より確認できる事実 |
| あなたにも反省点があるのでは | まず今回の相談を聞きます。仕事の指導は別の場で扱います | 相談と人事評価を分ける |
| 私が相手に言っておく | 誰に、何を伝えるかを先に相談しましょう | 共有による影響と希望 |
話を聞く時間と、仕事を教える時間を分ける
相談の中に、業務上のミスや意見の対立が含まれることもあります。その点を確認する必要があっても、面談の途中から部下への説教に切り替えると、相談の目的が失われます。
たとえば「ミスを注意された際に、大勢の前で人格を否定する言葉を言われた」という相談なら、ミスの有無と、注意の方法の妥当性は別の論点です。ミスがあったという理由だけで、どのような言い方でも許されることにはなりません。
上司自身が相談の対象に含まれる場合には、自分だけで聞き取りや結論づけを進めず、別の担当者につなぎます。「自分への不満を言われた」と受け取る前に、相談を扱う立場と当事者の立場が重なっていないか点検しましょう。
「誰にも言わない」と約束する前に、共有の範囲を話す
安心してほしいと思っても、必要な調査や安全確保のために他の担当者との連携が必要になることがあります。守れない約束を先にするより、「対応のために共有が必要なときは、相手と内容を説明します」と伝える方が、その後の不信を防ぎやすくなります。
厚生労働省の資料は、相談者・行為者などのプライバシー保護と、相談などを理由とする不利益な取扱いの防止を求めています。共有先を広げない、記録を関係のない人が見られる場所に置かない、といった扱いまで具体化したいところです。
安全に関わる緊急性がある場合は、その場で必要な連携を判断することもあります。その場合も、なぜ連携が必要なのか、どの情報を誰へ伝えたのかを説明できるようにします。「秘密にするか、全員へ知らせるか」の二択ではありません。
相談を受けた日の終わりに、三つだけ残す
長い面談記録よりも先に、本人が困っていること、当面の対応、次の連絡予定が残っているかを確認します。発言そのものと担当者の見立ては、同じ文章に混ぜずに書き分けます。「本人はこう話した」と「担当者としてここを確認する」は別の情報です。
その場で調査の結論が出ないことはあります。それでも、「担当窓口へ今日中に共有の方法を確認し、明日の午後に連絡する」など、次の動きを具体的にできます。連絡予定が変わったときも、何も分からないまま待たせず、変更を伝えましょう。
相談の翌日以降には、必要な仕事の連絡から外れていないか、勤務や役割が説明なく変わっていないかも確認します。表面上の会話が静かになったことだけで、問題が解消したとは判断できません。
Q. 部下の話を受け止めると、相手を加害者と決めたことになる?
A. なりません。つらさや困りごとを聞くことと、事実や責任を判断することを分けます。双方の説明などを確認する前に、処分や結論を約束しないことが大切です。
Q. 忙しくてその場で十分に聞けないときは?
A. 安全に関わる緊急性を先に確かめたうえで、落ち着いて話せる時間と場所を具体的に設定します。「今は無理」で終わらせず、別の相談先も案内できるようにしましょう。
KCPの視点:相談を解決する前に、相談を壊さない
雇用クリーンプランナーとして力を付けたいのは、難しい言葉で即答することより、話を受け止めて適切な担当へつなぐ力です。返答の仕方、記録の残し方、共有の範囲を日頃から練習しておくと、急な相談にも対応の順番を持てます。
研修では、今回のような処分報道をただ紹介して終わるのではなく、「最初の一言をどう返すか」を短い演習にしてみましょう。同じ内容を聞く質問でも、相手を責める言い方になっていないか。そこをチームで確かめることが、相談しやすい職場づくりの具体的な一歩になります。
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相談を聞き、次の対応につなぐ力を学ぶ
一般社団法人クレア人財育英協会では、雇用クリーンプランナー(KCP)の育成・認定を行っています。職場の相談をどう受け止め、誰と連携して対応するか。担当者としての学びを、日々の記録や職場の仕組みへつなげていきましょう。
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