2026.02.28
大阪地裁 マタハラ賠償110万円 産休を「快く受け入れさせる」発言が壊したもの|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】
妊娠報告すると「産休取るなら休まず働け」 マタハラ発言で110万円の賠償命令
大阪地裁がマタハラで110万円の支払いを命令
勤務先で産前産後休業(産休)の取得を責められるなどのマタニティーハラスメント(マタハラ)を受けたとして、女性の元社員が会社側に損害賠償を求めた訴訟の判決が、2026年2月27日に大阪地裁でありました。
山中耕一裁判官は、会社側に110万円の支払いを命じました。原告は220万円を請求していました。
豊能町での就職と妊娠判明 発言は年明けに起きた
判決によると、原告女性(40代)は令和4年9月、乳酸菌飲料製品の訪問販売で訪れた大阪府豊能町役場で知り合った男性職員の後押しで、同町の水道修理会社に就職しました。
就職から2カ月後の11月に妊娠が判明し、会社と男性に妊娠を報告しました。その後、年明けに会社を訪れた男性が女性を叱責したとされています。
男性は「俺の顔をつぶすんか」「産休は原告女性の幸せのためだけの休みやねん」と発言し、産休を取るなら「快く受け入れてもらうために休まず働け」と述べるなど、産休取得を責めたとされています。
叱責は2日間にわたり、各2時間ほど行われました。女性は退職代行業者に依頼して令和5年1月末に退職し、ストレスによる不安症とも診断されたとされています。
判決のポイント 合理性なし「人格権侵害」と認定
山中裁判官は、男性の叱責に合理的な理由はなく「女性の人格権を侵害した」と指摘しました。
叱責を知った社長も肯定的に受け止めていたとされ、「女性が良好な環境で働く権利を侵害した」と認定しました。
慰謝料として100万円を認め、支払額は110万円とされています。
論点 「協調性」の名で産休を条件付きにしない
男性側は「会社で勤務するに当たって協調性やチームワークが重要」と述べただけだ、などと主張していました。
記事では、マタハラを「働く女性が妊娠出産を理由に解雇や雇い止めをされたり、職場で精神的、肉体的な嫌がらせを受けたりすること」と説明しています。
また、最高裁が平成26年に「妊娠による降格などの不利益な扱いは原則として違法」との初判断を示し、その後も上司らの発言などを違法と認める裁判例が広がっているとされます。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 処分ではなく運用で止める
この事案は、制度の有無よりも「報告した瞬間の運用」が問われています。処分だけでは戻らない局面ほど、初動とエスカレーションの精度で決まります。
次の一手を、現場で動く形に落とします。
①初動:妊娠・産休の相談を受けた時点で、面談メモを残し、必要に応じて記録・録音も含めて事実を固定します。相談を受けた側の発言ルールも明文化し、責任者への即時エスカレーションを手順化します。
②相談ルート:相談窓口と内部通報を、雇用形態を問わず使える形で周知します。不利益取扱い禁止を抽象語で終わらせず、禁止される行為例まで具体化します。必要に応じて外部窓口や第三者委員会の設計も検討します。
③再発防止:事例共有を回し、管理職の発言基準と休業取得の運用を更新します。心理的安全性と安全配慮義務を、研修だけでなく日々の運用で担保します。
結語 産休は「善意」で取るものではなく、権利として運用されるべき
「快く受け入れてもらうために休まず働け」という言葉は、権利を取引条件にすり替えます。ここが起点になると、報告する側は沈黙を選びます。
判断軸は「制度があるか」ではなく「報告しても不利益が起きない運用が回っているか」です。妊娠は祝福で終わらず、組織の運用不全を露出させます。
