2026.04.09
スタートアップエコシステムのハラスメント調査で見えた起業家3割の現実。鍵は「多様なネットワーク」だった|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】スタートアップエコシステムにおけるハラスメント調査を実施―起業家調査で3割がハラスメント経験、多様なネットワークが鍵―
スタートアップのハラスメント調査 起業家3割の現実が可視化された
京都大学は4月9日、スタートアップエコシステムにおけるハラスメント調査の結果を公表しました。
2024年8月のNHK報道を契機に社会的関心が高まる一方、実態が十分に解明されていなかった領域について、ようやく輪郭が示された形です。タイトルにある「起業家3割」という数字は、ここが例外的な世界ではなく、既に摩耗が常態化している場だと告げています。
調査対象は2015年以降設立のスタートアップ1万3264社 有効回答は467件
調査は、経済産業省の協力のもと、京都大学、東京大学、一橋大学、慶應義塾大学が共同で実施したとされています。
対象は、企業情報プラットフォーム「Speeda」に登録された2015年以降設立のスタートアップ全13,264社で、有効回答は467件でした。これまで断片的に語られてきた問題を、数量として捉えようとした点に意味があります。
自己認識ではなく行為経験を問う設計 言い逃れや思い込みを外した
今回の調査票は、「起業家エコシステムの環境調査」として中立的に設計されたとされています。
特徴は、ハラスメントかどうかという自己認識を問うのではなく、具体的な行為経験を問う行動ベースの測定手法を採用したことです。つまり、「それはハラスメントだと思うか」という主観ではなく、「何をされたか」を積み上げて実態を取ったということです。
非性的ハラスメント31%、セクハラ6% 見えたのは起業の光ではなく権力差の現実
結果として、非性的ハラスメントは31%、セクシュアル・ハラスメントは6%だったとされています。
加えて、加害者の属性、ネットワークの広さとセクハラ報告の相関関係、さらにハラスメントが事業運営に潜在的な影響を及ぼす可能性も示されたとされています。起業家の世界は自由でフラットだという物語が好まれますが、実際には権力差と依存関係が濃く走っていることがここで露出しています。
論点 ハラスメントは個人の資質ではなく、エコシステムの設計不良でも起きる
スタートアップでは、資金、人脈、登壇機会、紹介、メディア露出などが、少人数のネットワークに集中しやすいです。そこでは、露骨な支配だけでなく、「逆らえば外れる」という空気のほうが強く働きます。
だから問題は、加害者が誰かだけでは終わりません。誰に依存し、どこにアクセスできず、どんな関係が閉じていたのか。ハラスメントは、個人の人格というより、場の設計不良としても起きます。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 起業家支援は資金より先に「逃げ道」を持つべきです
この調査の核心は、ハラスメントがあったという告発だけではありません。ネットワークの広さとセクハラ報告の相関が示された点です。つまり、誰とつながれるか、どこに頼れるかが、被害の見え方にも関わっている可能性があります。ここも運用で決まります。
次の一手は3つです。
①初動:アクセラレーター、VC、メンター、支援機関など、起業家が接触する場での言動を記録できる仕組みを持ちます。相手の立場が強いほど、事実固定の重要性が増します。
②通報設計:資金提供者や支援者と切り離された外部相談窓口を整え、不利益取扱い禁止を明文化します。相談したら次の資金調達や紹介が消える、という恐怖を放置したままでは誰も話せません。
③再発防止:イベント、面談、ネットワーキング、メンタリングなど、起業家が日常的に接する場に行動基準を入れます。エコシステム全体でルールを共有しなければ、加害者は場を移して生き延びるだけです。
結語 起業家に必要なのは、挑戦を称える言葉より、支配から抜けられる通路です
スタートアップの世界は、挑戦やスピードや熱量が称賛されます。ですが、その熱量が権力差を覆い隠す時、最初に削られるのは弱い立場の人です。
判断軸は単純です。そのエコシステムに、失敗から学ぶ自由だけでなく、ハラスメントから離脱する自由があるかどうかです。起業を増やす政策より先に、起業家が壊れずに残れる場を作れるかが問われています。
