2026.10.21

中小企業のハラスメント対策、少人数の職場こそ相談先を分ける理由

この記事の要点

少人数の会社でも、相談を聞く人・事実を確かめる人・対応を決める人の役割を分けて考えます。社内だけで難しい役割は外部と組み、相談者が次の連絡を待ち続けない仕組みにします。

「うちは人数が少ないし、困ったら社長に直接言える」。距離の近さは小さな会社の良さです。でも、相談したい相手が社長や創業メンバーだったら、誰に言えばよいでしょうか。

中小企業のハラスメント対策では、立派な規程の厚さよりも、言いにくい相手を避けても相談が届くかが問われます。人手不足で一人が何役も担う会社こそ、相談の仕事まで一人に背負わせない工夫が必要です。

中小機構が、人材活用とハラスメントを学ぶセミナーを発表

中小機構のJ-Net21は2026年10月20日、近畿本部と関西圏雇用労働相談センター(KECC)が共催する労務管理セミナーを案内しました。11月20日は多様な人材の活用、11月26日はスタートアップ経営者向けのハラスメントがテーマです。

発表では、いずれもオンライン開催、参加費無料とされています。後者はハラスメントの基礎知識と職場づくりをワークを交えて学ぶ内容です。参加を検討する場合は、日時や申込条件を主催者の最新案内で確かめてください。

この発表から考えたいのは、採用と職場づくりを別々の仕事にしないことです。人を迎えても、困ったときに声を上げられなければ、働き続けるための支えが足りません。以下は発表内容の要約ではなく、小規模な職場へ落とし込むためのKCPの解説です。

「相談先は社長」で止まってしまう3つの場面

例えば社員10人の会社で、相談窓口を社長だけが担当しているとします。社長への相談、社長と近い上司への相談、社長不在中の急ぎの相談。この3つで、同じ窓口がうまく働くかを考えてみます。

窓口の担当者が誠実でも、「相談したらすぐ本人へ伝わるのでは」と感じれば、社員はためらいます。会社側の善意だけでなく、相談する人から経路がどう見えるかも確かめたいところです。

厚生労働省のあかるい職場応援団は、内部・外部の窓口や、一次受付から調査担当への引継ぎを紹介しています。すべてを社内で完結させる必要はありません。ただし、外部窓口を置けば会社の対応が不要になるわけでもありません。

小さな会社でも役割を分ける
相談を受ける困りごと、安全、本人の希望を聞く
事実を確かめる当事者との関係を避け、必要な情報を集める
対応を決めて伝える権限のある人が措置を決め、実施と経過を確認

人数を増やせなくても「誰が決めるか」は分けられる

社員全員に別の担当を割り振る話ではありません。例えば総務担当が最初の話を聞き、当事者と利害関係のない外部専門家が調査を支え、会社の権限者が対応を決める形も考えられます。どこまで依頼するかは契約で確かめます。

相談の受付と事実確認を同じ人が担う場合も、「ここからは調査として話を伺います」と役割を伝えます。話を聞いた勢いで処分を約束したり、相手へその場で電話したりすると、後の確認を難しくすることがあります。

経営者自身が当事者なら、通常の報告経路をそのまま使うだけでは不十分な場合があります。誰が外部へ相談を依頼し、誰が費用や対応を決裁できるかまで検討します。連絡先だけを掲示して、使う権限が誰にもない状態を避けましょう。

よくある運用と、見直す一手
運用 止まりやすい理由 小さく始める改善
社長だけが窓口 社長や近い幹部への相談が難しい 別の連絡経路と外部窓口を示す
総務がすべて判断 調査・処分の権限まで持たない 受付後の責任者と引継ぎ先を決める
外部へ丸投げ 会社側の改善が動かない 回答を受けて誰が何を実行するか決める
担当不在なら待つ 安全への配慮や初動が遅れる 代替連絡先と緊急時の経路を用意

最初の返事で伝えるのは「解決します」より次の連絡

例えば「お話を伺いました。まず明日の勤務で困ることがないか確認させてください。今後の進め方は、○日までにご連絡します」と伝える。結論が出ていなくても、次の連絡の約束はできます。

反対に、「絶対に誰にも言いません」「必ず処分します」は、守れない約束になりかねません。必要な共有の範囲を説明し、本人の意向を確かめて進めます。共有が必要になる場面も含め、何が起きるかを見通せる説明にします。

返事の日を決めたら、その日に連絡する担当者も決めます。調査が続いている場合は、結論を急造するのではなく、確認中の事項と次の連絡日を知らせます。人事担当が兼務している会社ほど、予定を担当者の記憶だけに頼らないことです。

30分の打合せで試せる、小さな点検

ここでは運用を考えるため、短い社内打合せの例を示します。実際の相談案件や個人が分かる情報を持ち込まず、「窓口担当者が休みの日に相談が届いた」という仮の場面を使います。

30分の点検例
時間 話すこと 残すもの
最初の10分 誰が相談を受け取れるか 窓口・代替窓口の一覧
次の10分 安全への配慮と報告先 権限者、外部相談先、共有範囲
最後の10分 次の連絡を誰がするか 担当と連絡期限、未決事項

この点検で「実は窓口のメールを誰も見ていなかった」「担当者が辞めた後も古い名前を掲示していた」と分かれば、それだけでも改善の入口になります。全社研修を待たず、連絡が届くかという基本から確認できます。

KCPの視点:制度を置く人と、現場で使える人を育てる

窓口の担当者には、話を聞く力に加え、事実と受け止めを分けて記録する力、自分の権限を超えた判断を引き継ぐ力が必要です。経験だけに任せるより、共通の知識を学び、例題で確かめる方が役割を共有しやすくなります。

資格学習を検討するときも、「取得者がいるから安心」で終わらせず、学んだ人が窓口の案内、記録様式、管理職への伝え方を見直せるようにします。受講する人だけでなく、その人を支える上司にも役割を説明することが、学びを職場へつなぐ工夫です。

Q. 社員が少なければ、相談窓口は不要ですか?

A. 少人数を理由に相談経路をなくす考え方は適切ではありません。兼務や外部の活用も含め、安心して相談でき、必要な対応へつながる体制を考えます。

Q. 外部窓口を契約したら、社内の担当者は必要ありませんか?

A. 会社として措置を決め、実行する役割は残ります。外部の受付範囲と会社への報告方法、社内の責任者を合わせて決めましょう。

「何でも言って」から、一歩具体的な案内へ

相談先の名前、連絡方法、不在時の連絡先、その後の流れ。この4つを社員が迷わず見つけられるか、まず確かめてください。小さな会社の近さを安心につなげるには、言いにくいときにも使える道を残しておくことが必要です。

あわせて読みたい:ハラスメント相談の利益相反、担当者が当事者に近いときの体制づくり

相談を聞き、次の対応につなぐ力を学ぶ

一般社団法人クレア人財育英協会では、雇用クリーンプランナー(KCP)の育成・認定を行っています。職場の相談をどう受け止め、誰と連携して対応するか。担当者としての学びを、日々の記録や職場の仕組みへつなげていきましょう。

資格取得や担当者育成を検討されている方は、講座内容と資料請求の案内をご覧ください。

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