2026.10.22

就活セクハラを防ぐ連絡ルール、北海道の報道から考える個人LINEの扱い

この記事の要点

採用や実習で知り合った相手への連絡を、担当者個人の判断だけに任せないこと。使用する窓口・目的・時間帯・終了後の引継ぎまで決め、学生が個人宛ての誘いを断らなくても済む仕組みをつくります。

「学生からも返信があるから、嫌がってはいないはず」。採用やインターンに関わる人が、そう判断するのは危険です。相手は、返事をしなければ評価や選考に響くのではと考えているかもしれません。

就活セクハラの防止を、担当者の良識や学生の断る力だけに委ねないために。今回は、毎日の連絡の仕方から職場のルールを見直します。

北海道の報道で分かっていること

毎日新聞は2026年10月21日、北海道主催のインターンシップに関わった職員が、参加した女子学生にLINEで食事に誘うなどの連絡を重ねていたと報じました。学生が断った後も連絡が続いたとされています。

報道によると、学生からの相談を受け、道は謝罪し、職員をインターン担当から外しました。10月20日時点では事実関係を調査中で、処分は行っていないとされています。本記事でも、就活セクハラの疑いがある事案として扱います。

ここから先は、当該組織の内部事情を推測するものではありません。企業の採用担当や実習の受入担当が、同様の連絡上の問題を防ぐために使える運用例です。

「LINE禁止」だけでは、抜け道が残る

連絡手段を一つ禁止しても、別のSNSや個人メールへ移れば同じ問題が起きます。決めたいのはアプリの名前だけでなく、誰が、何の目的で、どの窓口から連絡するかです。

例えば日程変更は採用窓口のメール、当日の遅刻連絡は指定の業務用番号、相談は選考担当以外の窓口。用途が見えれば、学生も「この連絡は本当に必要なのか」を判断しやすくなります。

厚生労働省は、面談の時間や場所、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類などを事前に明確にし、労働者と求職者へ周知することを示しています。連絡方法を担当者ごとの慣習にしないことが、具体的な対策になります。

連絡ルールを学生へ渡すまで
会社が決める使う窓口、目的、時間、記録の扱い
担当者へ伝える個人判断の誘いをしない、例外は上司へ
学生にも示す返信の目安、断ってよい連絡、別の相談先

連絡先を交換したことは、私的な誘いへの同意ではない

業務のために連絡先を教えたことと、個人的な交際や食事への誘いに応じることは別です。返信が丁寧でも、相手が安心していると決めつけないようにします。

「今日は難しいです」と返されたとき、担当者が別の日を何度も提示する場面を考えてください。本人は予定を合わせているつもりでも、学生には断り続ける負担が生まれます。実習や選考の立場の差は、勤務時間が終わった途端になくなるわけではありません。

研修では「親切だったか」ではなく、「この連絡は業務上必要か」「会社の窓口で説明できる内容か」「返信しない選択を学生が取りやすいか」という問いで点検すると、話が具体的になります。

ありがちな連絡と見直し方
場面 生じやすい負担 会社としての運用例
個人SNSで日程調整 私的なやり取りへ移りやすい 指定の業務用窓口へ集約する
夜間の連絡に即返信を期待 休む時間や断る自由を奪う 連絡時間と返信の目安を示す
実習後も担当者から誘う 選考への影響を心配して断れない 終了後は採用窓口が必要な案内を行う
相談が当該担当者へ戻る 相談すること自体をためらう 選考担当と別の相談経路を案内する

実習が終わった日の「引継ぎ」まで決めておく

受入れ初日にルールを配るだけでは、終了後に個人の連絡先だけが残ることがあります。最終日に「今後の日程や選考の問い合わせはこちらへ」と正式な窓口を案内しましょう。

担当者が替わるときも、学生に同じ説明を何度も求めないよう、必要な範囲で引き継ぎます。一方、やり取りの記録を誰でも見られる共有フォルダへ入れるのは別の問題です。閲覧できる人、保存する目的、保管期間などを決め、個人情報を必要以上に広げない運用が要ります。

学校と連携する実習でも、相談があったら何でも自動的に学校へ送ればよいとは限りません。本人の希望と安全への配慮を踏まえ、共有する内容や連絡先を確認します。

相談が来たら「なぜ交換したの?」より、今の困りごと

最初に聞きたいのは、連絡が今も続いているか、次に会う予定があるか、選考や実習にどんな不安があるかです。「嫌ならブロックすればよかった」と本人へ解決を押し戻さないようにします。

やり取りの確認が必要なら、日時と文脈が分かる形で保存してもらう方法を説明します。ただし、個人端末の中身を必要以上に見せるよう求めたり、社内で画面を回覧したりすることは避けます。誰が確認し、何に使うかを伝えてから進めます。

担当変更などの安全確保と、事実関係の調査は並行できます。調査が終わるまで不安な接触を続けさせる必要はありません。同時に、処分などの結論を受付時点で約束せず、次の連絡時期を具体的に伝えます。

最初の返答を変える
避けたい返し方 伝えたいこと
どうして連絡先を教えたのですか いま続いている連絡や、会う予定で困っていることはありますか
担当者と話し合ってください 別の担当が伺います。連絡方法も一緒に考えましょう
調べるので待ってください まず安全への対応を検討し、次の連絡時期をお伝えします
絶対に誰にも言いません 対応に必要な共有先と内容は、説明しながら進めます

KCPの視点:規程を、送信前の判断に変える

2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が事業主の義務となりました。今回の報道で示された出来事の時期や、公務員に関する制度の適用と、一般企業が現在整える対策は混同せず考えます。

会社の担当者に必要なのは、条文を覚えるだけでなく、目の前の連絡をどこへ戻すか判断する力です。例えば「学生に個人SNSを聞かれた」という場面でも、個人のアカウントへ誘導せず、正式な窓口を案内する練習ができます。

雇用クリーンプランナーの学びも、相談の受け止め方や社内連携を日常の行動へ変えるところで役立てたいものです。資格を取った一人に任せきりにせず、採用と現場の受入担当が同じルールを使える状態を目指しましょう。

Q. 業務用のLINEなら、何を送っても問題ありませんか?

A. 業務用か個人用かだけで決まりません。内容、目的、時間帯、繰り返し、相手との立場の差を見ます。私的な誘いを会社のアカウントから送れば安全、という話ではありません。

Q. 学生から食事に誘われた場合は?

A. 担当者個人で判断せず、会社の採用・実習ルールへ戻します。選考との関係や参加の任意性、実施方法を確認し、断っても不利益を受けないことが伝わる対応にします。

まず、案内文に正式な連絡先があるかを見る

学生に「困ったら言ってください」と伝える前に、誰へ、どう連絡できるかを確かめてください。担当者の個人連絡先しかないなら、仕組みを変える余地があります。安心して参加できる実習は、連絡の入り口と終わり方からつくれます。

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相談を聞き、次の対応につなぐ力を学ぶ

一般社団法人クレア人財育英協会では、雇用クリーンプランナー(KCP)の育成・認定を行っています。職場の相談をどう受け止め、誰と連携して対応するか。担当者としての学びを、日々の記録や職場の仕組みへつなげていきましょう。

資格取得や担当者育成を検討されている方は、講座内容と資料請求の案内をご覧ください。

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