2026.05.06
認知症患者からのハラスメントで看護師の9割超が被害経験。「病気だから仕方ない」が現場を追い込む構造|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】〖看護師255名の悲鳴〗認知症患者からのハラスメント、9割超が経験。「病気のせい」という言葉が、現場の暴力・暴言を正当化する壁に。
認知症患者からのハラスメント調査で見えたのは、看護師の「我慢」が制度化された現場でした
株式会社ケアコムは、看護師・准看護師255名を対象に「認知症患者からのカスタマーハラスメントに関する実態調査」を実施したと公表しています。
リリースでは、回答者の約93%が認知症患者からのハラスメントを経験しているとされました。ここで重いのは、被害の有無より、その多くが「病気だから仕方ない」という言葉で黙認されてきたと示されている点です。
暴力・暴言・セクハラが日常化 半数超が「週に数回以上」と回答しました
経験した内容としては、暴力が88.2%、暴言が83.2%、セクシュアルハラスメントが56.7%、無視・拒絶が49.6%、過度な要求が44.1%とされています。
さらに、ハラスメント経験者のうち54.6%が「ほぼ毎日」または「週に数回」という高頻度で被害を受けているとされています。単発の事故ではなく、ケアの現場に繰り返し埋め込まれた圧力として存在しているということです。
精神的ストレスは100% 身体的負傷も半数超という深刻さでした
被害による影響では、回答者全員が精神的ストレスを挙げたとされています。
加えて、52.5%が通院や処置を要する身体的負傷を経験したとされています。痛みや痕が残る実害があっても、現場では記録に残すことしかできないという無力感が、62.2%の職務意欲低下につながっていると整理されています。
いちばん深刻なのは二次被害 報告しても「あなたの対応が悪い」と返される構造です
被害を受けた際に「何も行動しなかった」と答えた人は28.6%でした。その理由で最も多かったのは「認知症だから仕方ない」の85.3%とされています。
一方で自由記述では、「上司に報告しても、逆に関わり方の不備を指摘された」という二次被害の訴えも20.6%あったとされています。組織が職員を守るのではなく、職員の忍耐に依存して現場を維持しているという指摘が、ここで最も重く響きます。
現場の声が突きつけたのは、倫理と安全の板挟みでした
自由記述では、「病院の外なら警察沙汰になるような暴力も、病院内では病気による症状の一言で片付けられる」「抑制は悪だと教育されるが、抑制しなければ看護師の身が守れない」といった声が紹介されています。
つまり、現場の苦しさは感情論ではありません。患者への献身を求める倫理と、自分の身体と心を守る必要の間で、看護師が一人で引き裂かれているということです。
論点 「病気だから仕方ない」は、患者理解ではなく職員保護の放棄になり得ます
認知症ケアにおいて、症状への理解は欠かせません。ですが、その理解が現場の暴力や暴言をすべて受忍させる言葉に変わった時、話は別です。
問題は患者を責めることではありません。起きた加害や被害を、組織としてどう受け止め、どう共有し、どう支えるのかです。「病気だから仕方ない」で止める組織ほど、現場の離職と疲弊を静かに増やします。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 医療現場は「我慢の美徳」ではなく、支える手順を先に持つべきです
この調査の核心は、認知症患者からのハラスメントが多いという事実だけではありません。被害を受けた看護師が、組織から守られていないという点です。ここも運用で決まります。
次の一手は3つです。
①初動:暴力、暴言、セクハラ、拒絶、過度な要求が起きた時に、単なるインシデント記録で終わらせず、被害職員の状態と再発リスクまで含めて整理します。
②通報設計:上司への報告で止まらない相談窓口を整え、不利益取扱い禁止を明文化します。被害報告が「対応の仕方が悪い」にすり替わる構造を切らなければなりません。
③再発防止:個人の技術不足に戻さず、病棟全体、多職種、管理者、家族対応まで含めてチームで支える仕組みをつくります。心理的安全性と安全配慮義務は、医療倫理の陰に隠してはいけません。
結語 看護師を「天使」でいさせようとする職場ほど、看護師を先に壊します
患者のために尽くすことは大切です。ですが、その言葉が、暴力や暴言を受けても耐え続ける義務に変わった瞬間、看護は支え合いではなく消耗戦になります。
判断軸は単純です。その現場が、患者理解と職員保護を両立させようとしているかどうかです。片方だけを神聖化した職場では、もう片方が必ず壊れます。
