2026.04.03
NHK会長が入局式で示したハラスメント拒絶 「尊厳を傷つけてまでやる仕事はない」の重み|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】NHK会長「自分の尊厳を傷つけてまでやるような仕事はない」…入局式でハラスメント行為の拒絶に言及
NHKグループ合同入局・入社式で会長が示した方針
NHKの井上樹彦会長は4月1日、東京都世田谷区の放送技術研究所で開かれたNHKグループ合同入局・入社式で、「チームNHK」をキーワードに、それぞれの能力や専門性をかけ合わせ、AIの技術も駆使しながら新しい領域を広げていきたいと述べたと報じられています。
NHKは4月2日にこの内容を発表したとされています。新しい職員を迎える場で、単に歓迎の言葉を並べるのではなく、これから何を軸に組織を動かすのかまで示した形です。
「放送中心で大丈夫か」という時代に、NHKは何を約束したのか
記事によると、井上会長は、インターネット社会の到来でメディアが激変する時代に触れ、新しく入った人たちも「放送中心で大丈夫なのか」と感じたかもしれないと語ったとされています。
その上で、NHKを選んだということは、その潜在力や可能性を信じて入ってきたのだと思うと述べたと報じられています。ここで語られているのは、放送の延命ではありません。メディアの地盤が動く中でも、自分たちがまだ勝負できると組織として言い切る姿勢です。
「ものづくりの会社」として、テレビ・ラジオ・配信を束ねる
井上会長は、NHKは基本的にものづくりの会社であり、チームでテレビ、ラジオ、配信のコンテンツを次々に送り出していると述べたとされています。
さらに、こうしたコンテンツは海外のプラットホームからも高い評価を受けており、今後は開発力、発信力、展開力をさらに強め、NHKグループの総力を結集して取り組んでいく考えを示したと報じられています。
つまり、AIに触れたのも流行語としてではありません。コンテンツをどう作り、どう届けるかという競争の中で、組織の再編成を進める前提として語られています。
ハラスメント行為をする相手とは、取材も制作も取引もしない
今回の発言で最も重かったのは、ハラスメントのない職場環境の実現に触れた部分です。
記事によると、井上会長は、職場内はもちろん、ハラスメント行為をするような相手との取材や制作、取引は行わないと述べたとされています。そして、「自分の尊厳を傷つけてまで、身の危険を感じてまでやるような仕事はない」と語ったと報じられています。
ここで線引きされたのは、社内だけではありません。外部の相手が加害側であっても、仕事だから我慢しろとは言わないということです。
論点 「いい仕事のために耐えろ」を組織が否定できるか
組織がハラスメント防止を掲げること自体は珍しくありません。ですが、本当に問われるのは、外部との関係で仕事を止める覚悟まで持てるかです。
制作現場や取材の現場では、相手が強い立場にいるほど、「今は飲み込め」「ここで関係を壊すな」という圧力が働きやすいです。だから今回の発言が重いのです。価値あるコンテンツのためでも、尊厳を削ってよいとは言わなかったからです。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 社内対策だけでは、現場は守れない
この発言の本質は、きれいな理念ではありません。職場の外にいる相手が加害者でも、組織が現場を守る側に立つと明言したことです。ここも運用で決まります。
次の一手は3つです。
①初動:取材先、制作先、取引先など外部からのハラスメントも、社内の相談案件として即時に記録化します。日時、相手の言動、現場の状況を残し、必要に応じて管理職へ即時エスカレーションします。
②通報設計:相談窓口と内部通報を、社内の上司部下関係だけでなく、外部相手の案件でも使えるようにします。不利益取扱い禁止を明文化し、「現場判断で我慢した方が早い」を止める必要があります。
③再発防止:現場に「どこで断るか」の基準を渡します。ハラスメントをする相手との取材、制作、取引を止める手順、判断権者、代替手段まで具体化しなければ、発言はスローガンで終わります。
結語 仕事の価値より先に、人の尊厳に線を引けるか
どれほど意義のある仕事でも、人の尊厳を削って続けるなら、組織は中から腐ります。成果が出るかどうかの前に、何を差し出してはいけないのかを決めなければならないからです。
判断軸は単純です。仕事を守るために人を削るのか、人を守るために仕事を止めるのかです。今回の発言が本物かどうかは、最初に「その相手とはもうやらない」と言う場面で決まります。
