2026.03.22
釧路税務署のパワハラ認定と自死の因果関係。24歳職員の申立てで問われる「強いパワハラ」の線引き|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】「休日に車出せ」釧路税務署の24歳職員が自ら命を…国税局はパワハラ認定も「死ぬほどではない」と因果関係を否定「自分なら耐えられない…」同僚も証言した執拗なパワハラとは 両親が人事院に申し立て
釧路税務署の24歳職員の自死 遺族が人事院に公務災害認定を申し立て
釧路税務署に勤務していた当時24歳の男性職員が自ら命を絶ったことについて、遺族らが公務災害の認定を求めて国の人事院に申し立てを行ったと報じられています。
記事によると、この男性は2020年に国税庁に採用され、同年6月から釧路税務署に配属されていました。遺族側は、上司からのパワーハラスメントなどが原因だったと主張しています。
休日の「車を出してくれ」 国税局認定だけでも9カ月で13回
記事では、上司である特別徴収官が、休日に私的な買い物や用事のために「車を出してくれ」「お前の車を貸してくれ」と繰り返し求めていたとされています。
新人職員だった男性にとって、上司の要求に逆らうことは極めて困難だったと説明されています。札幌国税局が認定した事実だけでも、この行為は9カ月で13回に上るとされています。
職場での日常的叱責 複数の上司からの言葉が重なった
記事によると、男性は統括国税徴収官や上席国税徴収官など、複数の上司から日常的に叱責されていたとされています。
開示文書には、「日本語がおかしい、徴収官としてありえない」「大島の割には頑張ったんじゃないか」などの言葉が記載されていたと報じられています。
さらに、同僚の証言として「仮に自分がその立場であれば、耐えられないと思った」「いじりというか、ばかにされたのが原因ではないかと思った」といった内容も紹介されています。
札幌国税局の判断 パワハラは認定も、自死との因果関係は否定
記事では、札幌国税局が、休日の車の要求について「パワーハラスメントである」と認定したと伝えています。
一方で、その行為について「自殺という結果に結びつくほどの強いパワハラであったとは言えない」と判断したとされています。ここで争点になっているのは、パワハラの有無ではなく、それがどの程度の重さで評価されたのかという点です。
遺族は不服申し立て 3月25日に意見陳述へ
両親は、札幌国税局の通知内容を不服として、2025年11月に国の人事院へ審査の申し立てをしたと報じられています。
記事によると、3月25日に意見陳述に臨む予定です。遺族は、パワハラを行った人たちに責任を取ってほしいこと、これから社会に出る人たちに同じ思いをさせたくないことを訴えています。
論点 認定したのに「そこまでは強くない」と言えるのか
この件で露出しているのは、加害行為を認定した後の線引きです。パワハラはあったが、自死に結びつくほどではない。この判断は、被害の実感と制度の評価がずれる時に何が起きるかを突きつけます。
しかも問題は、単発の暴言ではありません。休日の私的使役、日常的な叱責、複数上司からの言葉、同僚が「自分なら耐えられない」と証言する空気まで含めて、職場全体がどう機能していたかが問われています。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点 因果関係の前に、逃げ場があったかを問う
この件の厄介さは、パワハラ認定の有無ではなく、認定後に「そこまでではない」と線を引けてしまう点です。制度が重さを測る時、職場にいた人の逃げ場が消えていたかは、数字より先に見なければなりません。ここも運用で決まります。
次の一手は3つです。
①初動:休日の私的使役、日常的叱責、侮辱的な言葉も一件ごとに切らず、回数、関係性、継続期間まで含めて事実固定します。面談メモ、メール、やり取り、必要に応じて記録・録音を整理し、即時にエスカレーションします。
②通報設計:新人や若手でも使える匿名相談と内部通報を整え、不利益取扱い禁止を明文化します。直属上司が加害側にいる時でも、別ルートで声を上げられる設計が必要です。
③再発防止:個人の処分だけで終えず、複数上司の関与、職場風土、私的使役の黙認まで検証します。心理的安全性と安全配慮義務は、申告が来た後ではなく、申告しなくても壊れない職場を作れるかで問われます。
結語 「死ぬほどではない」という線引きが、誰のための線だったのか
パワハラを認めながら、結果との距離だけを切り分ける判断は、制度としてはあり得るのかもしれません。ですが、遺族が問うているのは、法技術ではなく、その線引きが現場の苦しさを本当に受け止めていたのかということです。
判断軸は単純です。若手職員が、休日も職場も含めて拒否できる関係にいたのかどうかです。そこが崩れていたなら、問題は一人の弱さではなく、組織が「ここまでは壊れない」と見積もった冷たさにあります。
