2025.07.30

ハラスメント相談窓口の設置義務と運用手順|担当者・受付・初動対応

ハラスメント相談窓口は、連絡先を設けるだけでは足りません。事業主には、相談を受けられる体制を整え、担当者が適切に対応できるようにすることが求められます。受付後の安全確保、事実確認、対応の決定、再発防止まで、誰が何をするかを決めておきましょう。

この記事は、窓口を設置・見直しする人事担当者と、相談を受ける担当者向けに、法令上の基本と実務で使う手順を整理したものです。

相談窓口の設置義務は、どのハラスメントが対象か

対象・主な根拠法 確認すること
パワハラ
労働施策総合推進法
中小企業を含め、2022年4月から全事業主に防止措置が義務付けられています。
セクハラ、妊娠・出産等に関するハラスメント
男女雇用機会均等法
相談体制の整備に加え、方針の周知、事案への適切な対応等が必要です。
育児・介護休業等に関するハラスメント
育児・介護休業法
制度の申出・利用を妨げる言動等にも対応します。
カスハラ、求職者等へのセクハラ
労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法
2026年10月1日から防止措置が義務化されています。顧客対応や採用活動を含め、対象に合う相談経路を確認します。

同じ窓口で複数の類型を扱う場合も、対象者と相談内容を明確に案内します。事業主による妊娠・出産、育児・介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止と、上司・同僚の言動に対する防止措置は区別して確認してください。

根拠:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

設置前に決める担当者と役割分担

  • 受付担当:話を聴き、安全・健康状態と本人の希望を確認し、記録します。
  • 事実確認担当:当事者双方や関係者の説明、メールなどの資料を確認します。
  • 判断・対応の責任者:確認結果を基に必要な措置を決め、再発防止と経過確認の担当を置きます。

上記は運用を整理するための役割例です。小規模企業で兼務する場合も、相談対象者本人や利害関係のある人が判断を独占しないようにします。直属の上司を通さず相談できる経路や、担当者が不在・当事者となった場合の代替経路も案内します。

相談を受けた最初の面談で確認すること

  1. 今の安全と健康:接触を避ける必要があるか、仕事を続けられる状態か、緊急の支援が必要か。
  2. 起きたこと:いつ、どこで、誰から、どのような言動があったか。話せる範囲から聴きます。
  3. 本人の希望:何に困っているか、どのような対応を望むか、情報共有に不安があるか。
  4. 今後の進め方:誰に何を共有する可能性があるか、次の連絡方法と予定を説明します。
相談の受付と、ハラスメントの認定は別です。証拠がそろっていない、該当するか分からない段階でも相談を受けます。「気にしすぎ」「本人に言えばよい」と片づけず、担当者だけで即断しないことが大切です。

秘密の扱いは具体的に説明します。事実確認が必要になることもあるため、「誰にも一切伝えない」と約束せず、共有先・目的・範囲を相談者に説明して進めます。関係者のプライバシーを保護し、相談や事実確認への協力を理由とする不利益な取扱いを防ぎます。

受付から再発防止までの対応フロー

安全確保と心身への配慮は、以下のすべての段階で並行して行います。一律の「72時間以内」「90日で完了」を法定期限として扱わず、緊急性に応じて速やかに対応し、連絡予定を管理します。

  1. 1. 受付・当面の対応希望と緊急性を確認し、必要な保護や業務上の配慮を検討する。
  2. 2. 事実確認双方から個別に聴き、資料と照合する。確認できた点と未確認の点を分ける。
  3. 3. 判断・適切な対応確認結果と該当する法令・社内規程に基づき、責任者が必要な措置を決める。
  4. 4. 再発防止・経過確認周知・研修や職場環境を見直し、報復や再発、勤務上の支障がないか確かめる。

事実を確認できなかった場合も、直ちに「虚偽」と扱いません。相談者への説明や、必要な職場環境の改善・再発防止を検討します。判断が難しい事案は、労働局や弁護士等へ相談する経路をあらかじめ決めておきます。

記録は「事実・受け止め・未確認事項」を分ける

以下は説明用の記録例です。本人が話した内容は「本人の説明」と明記し、出来事そのものが確認済みであるかのように書かないようにします。

記録の区分 書き方の例
確認した内容と出所 本人は「会議で『向いていない』と言われた」と説明。日時・同席者を本人から聴取。実際の発言は未確認。
本人の受け止め・希望 会議への参加が怖いと話す。次回面談まで直接の接触を減らしたいとの希望。
未確認事項・次の確認 発言の前後の経緯、同席者の認識、会議記録の有無を確認する。

記録の閲覧者、保管場所、持ち出し・共有方法を定めます。相談内容をそのまま全社共有したり、個人が分かる形で研修に使ったりしないよう注意します。

設置後は、窓口の案内と担当者の支援を続ける

相談方法、対応時間、対象者、秘密の扱い、相談による不利益取扱いを禁止する方針を、従業員が見つけられる場所に掲示します。担当者が一人で抱え込まないよう、引継ぎ先と相談できる専門家を確認します。

日々の運用点検には、相談窓口を機能させる5つのポイントとチェックリストを利用できます。研修・窓口・初動を含む全体の見直しは、ハラスメント防止対策の5つの確認で整理しています。

相談窓口のよくある疑問

小規模企業でも専任者が必要ですか?

専任者の配置や特定の民間資格の取得が、一律に求められているわけではありません。兼務でも適切に対応できる体制と力量を確保し、利害関係がある場合の代替担当・外部窓口等を準備します。

匿名の相談を受けてもよいですか?

匿名で受け付ける運用も考えられます。ただし、追加確認や結果の連絡に制約があるため、可能な対応と限界を事前に案内します。匿名であることだけを理由に内容を軽視しないようにします。

窓口担当者の学習と書式の整備を進める

内容確認・改訂:2026年10月16日

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