2026.02.05
熊本南病院の看護師2人をパワハラ処分。「怒鳴る・叩く・人格否定」を“指導”にしない職場設計|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】女性看護師、「何度教えたら分かるとね」と怒鳴る・頭を指さし「ちょっとおかしいよね」…2人を懲戒処分
国立病院機構が熊本南病院の看護師2人を懲戒処分──停職3日と戒告
国立病院機構九州グループは2026年2月3日、同僚へのパワーハラスメント行為が確認されたとして、熊本南病院に勤務する50代の女性看護師を停職3日、60代の女性看護師を戒告の懲戒処分にしたと発表しました。
発表によると、50代看護師は2023年7〜12月に、同僚に「何度教えたら分かるとね」などと怒鳴ったほか、持っていたファイルで別の同僚を叩く行為があったとされています。60代看護師は2021〜2023年ごろ、同僚に向かって自身の頭を指さしながら「ちょっとおかしいよね」と叱責するなどの言動があったとされます。
「怒鳴る」「叩く」「人格否定」は、指導ではなくハラスメント
医療現場は緊張度が高く、ミスが許されにくい環境です。だからこそ指導や確認が必要になる一方で、感情の爆発が「指導」の名で正当化されやすい土壌もあります。しかし、今回認定された行為は、いずれも業務指導の範囲を超えており、職場の心理的安全性を破壊する典型例です。
「何度教えたら分かるとね」と大声で怒鳴る行為は、改善のための具体的指示ではなく、相手を萎縮させる威圧として機能します。ファイルで叩く行為は、指導ではなく身体的攻撃です。「ちょっとおかしいよね」という発言は、業務能力の指摘ではなく人格否定に近く、相手の尊厳を直接傷つけます。
こうした言動が続けば、被害者は相談しづらくなり、ミスの報告や確認も遅れ、結果として医療安全にも影響が出ます。医療現場のハラスメントは、個人のメンタルだけでなく、患者の安全にもつながる問題です。
相談窓口への申し出で発覚──「言える」導線が機能した点は重要
被害を受けた3人が2023年12月に相談窓口へ申し出たことで発覚したと報じられています。病院を管轄する国立病院機構九州グループは「職員がハラスメント行為を行ったことは誠に遺憾で、再発防止に努めたい」とコメントしました。
医療現場では上下関係や多忙さから、被害があっても「我慢してしまう」「言ったら働きにくくなる」と沈黙しやすい傾向があります。その中で、相談窓口が機能し、処分までつながったことは、一定の抑止効果を持ちます。ただし、処分だけで終わらせず、職場文化と運用を変えることが再発防止の本丸です。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──医療現場の再発防止は「教育」と「配置」と「初動」で決まる
今回の事案は、特定の個人の資質の問題に見えますが、医療現場では同種の行為が繰り返されやすい構造があります。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、再発防止の鍵は次の3点です。
第一に、指導の標準化です。「叱る」ではなく「手順を示す」。誰が教えても同じ品質になるチェックリストやOJT設計、声のかけ方のテンプレを整備し、怒鳴らなくても回る仕組みを作る必要があります。経験者の“勘”に依存すると、苛立ちが増えやすくなります。
第二に、配置と負荷の見直しです。怒鳴りやすい環境は、たいてい業務負荷と余白のなさから生まれます。夜勤や急性期対応の負荷、教育担当の割り当て、休憩の確保などを見直し、「疲弊が攻撃性に変わる」ルートを断つことが必要です。
第三に、初動対応の徹底です。相談窓口に申し出があった時点で、被害者保護、事実確認、暫定措置、再発防止策の提示までを期限付きで回す。これを個人技にしない。医療現場は入れ替わりが多く、属人的運用だと再発します。
結語:医療安全の土台は、看護師同士が安心して言える職場である
怒鳴り声が響く職場で、ミスの報告が早くなることはありません。叩かれる不安がある職場で、確認の一言が増えることもありません。医療安全の土台は、心理的安全性です。
今回の処分を「個人の問題」で終わらせず、指導の標準化、負荷の調整、相談導線の強化へつなげられるかが、信頼回復の分岐点になります。一般社団法人クレア人財育英協会は、医療現場が「厳しさ」を怒鳴りや叩打で表現しないための制度設計と、現場運用の改善を支援していきます。
