2025.10.21
無資格で社労士業務──「労使の信頼」を損なう違法行為と制度の意義
【出典】読売新聞(2025年10月20日配信)
無資格で社会保険労務士業務疑い、税理士と行政書士を逮捕…大阪府警
税理士と行政書士を逮捕、340件の社労士業務を無資格で実施
大阪府警は20日、社会保険労務士の資格がないにもかかわらず業務を行ったとして、大阪市中央区の税理士法人代表税理士(39)と同法人の行政書士(46)を社会保険労務士法違反容疑で逮捕しました。
2人は2022年4月から2025年8月にかけて、顧問先企業の約340件の労働保険申告や還付請求業務を無資格で行い、報酬として約400万円を得た疑いが持たれています。報酬は1件あたり5,000円〜10万円。大阪府社会保険労務士会の情報提供を受けた府警が昨年10月に事務所を捜索し、押収資料から違法行為が発覚しました。
「労使の信頼」を守る社労士制度
社会保険労務士(社労士)は、労働基準法・社会保険法に基づき、労働者と企業の双方の権利を守る国家資格です。
企業の手続きを代行するだけでなく、労働トラブルの予防・解決、就業環境の改善、福利厚生制度の支援などを担う重要な専門職です。
社労士法は、これらの業務を無資格で行うことを明確に禁じています。無資格者が関与すれば、従業員の保険料計算ミスや不適切な申請につながる可能性があり、企業と労働者の信頼関係を根底から揺るがす行為となります。
大阪府社会保険労務士会は「社労士制度は労使双方の権利を守り、福利厚生を支えるもの。無資格者による業務は公益性を傷つける」と声明を出しました。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「専門職の倫理」と「信頼の透明化」
雇用クリーンプランナー(KCP)は、今回の事件を「専門職の信頼を利用した構造的な不正」と位置づけます。
企業の労務や社会保険手続きは、高度な法知識と実務経験を要する分野です。
無資格のまま業務を請け負うことは、単なる違法行為ではなく、労働者保護の仕組みそのものを破壊する行為でもあります。
KCPは次の3つの対策を提言します。
① 業務委託時の「専門資格チェック」制度化
企業が顧問契約を結ぶ際に、国家資格の有無と登録番号の確認を義務化すべきです。
特に税理士や行政書士など他士業との境界業務では、社労士資格の確認を怠らない体制が求められます。
② 無資格代行の情報共有ネットワークの整備
各地の社労士会と労働局・警察が連携し、違法業務の通報・データ共有の仕組みを強化する必要があります。
信頼性の高い専門家ネットワークを構築し、事業者が安心して相談できる環境を整えます。
③ 専門職の倫理教育の再構築
資格者であっても、顧客ニーズを優先するあまり法令を軽視するケースがあります。
専門職には「スキル」だけでなく「倫理」を教える教育プログラムの常設が不可欠です。
信頼は「資格」ではなく「誠実な行動」から生まれる
資格は社会的信頼を得るための入り口にすぎません。
大切なのは、法律に基づき、労働者と企業双方の安心を守るという専門職としての使命感です。
今回の事件は、「専門家の信頼」が社会の中でどれほど重い責任を伴うかを改めて示しました。
KCPは今後も、労務・雇用の健全化を担う専門家ネットワークの倫理強化を支援し、「信頼で動く職場社会」の実現に向けた取り組みを続けていきます。
