2025.10.22
東海大病院に是正勧告──医師の長時間労働・未払い残業が示す「医療現場の限界」
【出典】毎日新聞(2025年10月21日配信)
東海大病院に是正勧告 医師らの長時間労働・未払い賃金で労基署
労基署が「長時間労働と未払い残業」を是正勧告
神奈川県伊勢原市の東海大学医学部付属病院が、医師らの長時間労働および未払い残業に関して労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが明らかになりました。関係者によると、2023年9月の立ち入り検査を経て、2024年5月に計11項目の是正勧告と4項目の指導票が交付されたということです。
病院関係者は取材に対し、「残業代を請求しても『未払いはない』と門前払いされた」「当直中の救急対応が勤務時間に含まれず、翌日も通常勤務が続いた」と証言。労基署の調査では、長時間労働の放置と産業医報告体制の不備などが指摘されています。
年2,000時間超の医師も──「過労死ライン」の2倍
東海大病院が策定した「医師労働時間短縮計画」によると、2022年度の実績では、年間の時間外・休日労働が2,000時間を超える医師が11診療科に存在していたといいます。これは過労死ラインとされる年960時間の2倍にあたる深刻な数字であり、臨床研修医を含む若手医師にも該当者が確認されました。
医師の働き方改革を支援する労働組合の関係者は「健康被害が心配なレベル。制度的な長時間労働の温床になっている」と指摘しています。
「聖職の自己犠牲」が限界を迎えている
医療現場では長年、「患者のため」「医師として当然」という聖職意識と自己犠牲の文化が、過重労働を黙認させてきました。
勤務時間外の対応や当直後の通常勤務も慣例化し、結果として長時間労働と無賃労働が制度的に固定化しています。
雇用クリーンプランナー(KCP)は、この構造を「善意による構造的ブラック化」と定義しています。
制度が意図せず現場の犠牲を前提に成り立っている点に、根本的な問題があります。
雇用クリーンプランナー(KCP)の提言──医療現場に“労務管理の再設計”を
KCPは、医療機関における長時間労働の是正を進めるには「倫理」ではなく「制度」として労務管理を組み直す必要があると考えています。
1. 労働時間の実測化と可視化
当直・研修・オンコール対応などを含めた実労働時間の記録システム化を徹底すること。
感覚的な「勤務外労働」ではなく、客観的データで管理する仕組みが欠かせません。
2. メディカル・ハラスメント対策との一体化
長時間勤務を「使命感」で押しつける文化そのものがハラスメント構造になっています。
上層部の言葉や人事評価の在り方を再設計し、「働き続けられる医療」へ転換する必要があります。
3. 産業医と労務担当の連携強化
医療機関では産業医制度が形骸化しやすい傾向にあります。
KCPは、産業医が職場巡視と人事労務を一体で評価する体制を提案しています。
現場に寄り添う「労務医マネジメント」の導入が重要です。
患者を守るために、まず医師を守る仕組みを
医療は「命を支える仕事」であり、同時に「働く人の健康を犠牲にしては成り立たない仕事」でもあります。
患者の安全を守るためには、まず医師の健康と労働環境を守ることが出発点です。
KCPは、医療従事者の働き方改革を労務の専門家×医療現場の共同プロジェクトとして支援していきます。
持続可能な医療は、現場の信頼と安全の上にしか築けません。
