2025.09.22
国勢調査で相次ぐ危機──回収率低下と調査員死亡が示す「制度疲労」
【出典】毎日新聞(2025年9月19日配信)
回収率減、擦り減る調査員のメンタル 岐路を迎える国勢調査
【出典】関西テレビ(2025年9月21日配信)
国勢調査の初日に悲劇…80歳の調査員が訪問先マンションで倒れ死亡 家族「心臓に持病」 兵庫・姫路市
国勢調査の現場で起きた「二つの危機」
国の最重要統計とされる国勢調査が、制度疲労の真っただ中にあります。一つは「回収率の低下」。調査票の未回収率は1995年0.5%から、直近では16.3%に急増し、東京都では回収率7割という有様です。調査員は住民からの拒絶や不信感に直面し、心身を擦り減らしています。もう一つは「調査員死亡の悲劇」。9月20日、調査初日に姫路市で80歳の調査員が訪問先マンションで倒れ、その後亡くなりました。人手不足と高齢化が進む中、重い負担を抱える現実が命を奪った形です。
高齢化と不信感が重なる現場
調査員は約61万人規模で必要とされますが、確保は難しくなっています。背景には、
・単身世帯やオートロック増加による回収困難
・プライバシー意識の高まりで「詐欺かも」と疑われる現場
・高齢者に依存する調査員体制
といった課題があります。結果として「働く人のメンタル疲弊」と「身体的リスク」が同時に進行し、今回の死亡事案に象徴されるように制度の限界が表面化しています。
「義務感」に頼る仕組みの限界
調査員の多くは地域の信頼や義務感から業務に携わります。しかし、その善意に依存する仕組みは持続可能ではありません。「義務感」と「やりがい」は誇るべきものですが、安全管理や制度的支援が伴わなければ、心身への過重負担を強いる構造になってしまいます。国勢調査が抱える「制度疲労」とは、この矛盾を意味しています。
雇用クリーンプランナーの視点から
今回の二つのニュースは、労務管理の視点からも重大な示唆を与えます。
・高齢者労働のリスクを制度的にどう補うか
・調査員が安心して働ける安全配慮(複数人対応・緊急体制)
・住民への周知不足を補う広報やデジタル活用
・「声を上げられない疲弊」を放置しない相談体制
雇用クリーンプランナー(KCP)の立場から言えば、これは単なる統計の問題ではなく「働く人を守れない制度設計」が根本原因です。
まとめ──国勢調査を支える人を守れるか
国勢調査は国の政策・自治体計画・企業戦略を支える基盤です。しかし、その現場を担う調査員がメンタルを擦り減らし、ついには命を落とす事態が起きています。「制度を守るために人を犠牲にする」のではなく、「人を守るからこそ制度が持続する」――この視点の転換が不可欠です。あなたの職場でも「使命感」や「やりがい」に頼りすぎていないでしょうか。国勢調査の危機は、社会全体の働き方と制度設計を問い直す鏡でもあるのです。
