2025.10.22

介護施設で入浴中の高齢女性が死亡──「60度の湯温」が示す介護現場の危うさ

【出典】読売新聞(2025年10月22日配信)
施設で入浴介助受けた女性、高温の湯船に入れられ死亡…通常より20度高い60度の設定


介護施設で「60度の湯温」事故が発生

大阪市生野区の介護老人保健施設「アネシス寺田町」で、入所者の女性(90代)が高温の湯に入れられ、死亡していたことが分かりました。事故が起きたのは8月4日の午前9時半ごろ。
入浴介助を担当していた職員が女性を浴槽に入れたところ、女性が「熱い」と声を上げました。

その後、湯温を確認すると通常より20度高い60度に設定されていたことが判明しました。
女性は全身にやけどを負い、病院に搬送されましたが、命を落としました。


消毒後の設定ミス、気づかぬまま入浴介助

施設によると、浴室は150床規模の介護老人保健施設に併設されています。
事故の2日前、浴室では消毒作業を行うために湯温を60度に上げていました。
しかし、担当職員はその設定を戻さないまま入浴介助を行ったといいます。

事故当日は職員が1人で入浴介助を担当しており、確認手順の不備があった可能性があります。
大阪府警は業務上過失致死容疑で、事故の経緯と管理体制を詳しく調べています。


「確認すべき当たり前」が失われている現場

入浴介助は介護の中でもリスクが高い業務の一つです。
高齢者の皮膚は薄く、体温調節も難しいため、わずかな温度差でもやけどの危険があります。
本来は二重チェックや湯温計の確認が義務づけられていますが、人手不足や作業負担の増大で、安全確認が形骸化している施設も少なくありません。

「慣れ」「忙しさ」「人任せ」が重なり、「確認すべき当たり前」が抜け落ちる。
この事故は、介護現場の慢性的な構造的リスクを浮き彫りにしています。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──安全と効率を両立させる介護現場へ

雇用クリーンプランナー(KCP)は、この事故を「人手不足と業務設計の不備が重なった労務リスク事故」とみています。
介護業界では、少人数勤務や非正規職員への依存が進み、安全確認の分業体制が崩壊しているケースが増えています。

KCPは、介護現場の再発防止策として次の3点を提言します。

① 二重確認の義務化と自動警報システムの導入

湯温や薬品濃度など、命に関わるチェック項目にはデジタル監視と手動確認の両立を。
自動センサーや異常検知システムを導入することで、ヒューマンエラーを防ぎます。

② 入浴介助の複数人配置と教育の標準化

安全を守るには、1人介助体制を避けることが重要です。
介護スタッフが相互に確認できる仕組みと、教育プログラムの更新が求められます。

③ 「作業」ではなく「ケア」としての再設計

入浴介助を単なる作業として扱うのではなく、人の命を預かる医療行為に準ずる業務として再設計すること。
リスクマネジメントを組織文化として根づかせることが必要です。


命を預かる仕事だからこそ、「確認」は文化でなければならない

介護現場では、わずかな油断が命を奪います。
今回の事故は「確認不足」ではなく、「確認を支える体制がなかった」ことが問題です。

KCPは、介護や医療の現場で働く人が安全に働ける環境こそが、利用者の安全を守る最初の一歩と考えます。
安全を“手順”ではなく“文化”として定着させる取り組みを、社会全体で進めていく必要があります。

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