2025.10.21
「どうなってるねん」──再発した消防幹部のパワハラが示す、組織の“学ばない体質”
【出典】京都新聞(2025年10月20日配信)
関係ない職員に大声で「どうなってるねん」、60歳消防監を減給処分 3年前にもパワハラで戒告
関係ない職員に大声で叱責、再び処分
滋賀県の湖南広域消防局は20日、部下へのパワーハラスメント行為を行ったとして、消防局消防監の男性職員(60)を**減給10分の1(3カ月)**の懲戒処分にしたと発表しました。消防監は同日付で依願退職しました。
同局によると、男性は6月16日、救急資器材の紛失が発生した消防署を訪れ、対応にあたっていた職員に対して「どうなってるねん」などと大声で叱責しました。しかし、この職員は紛失事案には関係がなく、管理監督の立場にもなかったといいます。
消防監は2022年にも複数の部下に対するパワハラ行為で戒告処分を受けており、今回が2度目の懲戒処分となりました。堀田武司消防局長は「あるまじき行為で深くおわび申し上げる。職員が働きやすい環境の醸成に取り組む」とコメントを発表しました。
「再発」が意味する組織の学習欠如
今回の事案の本質は、個人の暴言ではなく、組織が過去の教訓を活かせなかったことにあります。消防監はすでにパワハラで戒告処分を受けており、再発防止の研修やフォローが行われていたはずです。それにもかかわらず、再び同様の行為が起きたということは、“個人任せの対策”が限界を迎えているということを意味します。
パワハラは「行為者個人の問題」として終わらせがちですが、実際には組織の管理体制・人事評価・職場文化など複数の要因が絡み合っています。一度戒告を受けた幹部職員に対して、どのような再教育・モニタリングがなされていたのか。防止策が「形式化」していなかったか。そこにこそ再発防止の焦点があります。
雇用クリーンプランナー(KCP)の提言──「処分」で終わらせない仕組みを
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点では、再発防止には「処分」よりも行動変容の設計が必要です。
組織が本気でパワハラを根絶したいなら、以下の3つの施策を実行する必要があります。
1. 再発防止プログラムの義務化
懲戒処分を受けた職員に対し、定期的な面談・教育プログラムを義務づけ、行動改善の進捗を人事部門や外部専門家が確認します。
2. 監督職層へのフォローアップ研修
特に消防や警察など階層的な組織では、「厳しさ=指導」という誤解が根強く残っています。指導と叱責の違いを明確にする研修を、幹部層ほど徹底する必要があります。
3. 職員の「声」を拾うモニタリング制度
内部通報に頼らず、定期アンケートや心理的安全性の測定を導入し、現場の職員が安心して意見を出せる環境をつくることが重要です。これにより、再発の兆候を早期に察知できます。
厳しさではなく「敬意」で動く組織へ
消防という使命感の強い現場では、「規律を守らせる」「責任を果たす」という意識が強く、つい感情的な指導に走りがちです。
しかし、叱責では信頼は生まれません。敬意のない指導は、現場の士気を下げ、命を守る力さえ奪ってしまうのです。
組織の信頼は、厳しさではなく「敬意」でつくられます。KCPは今後も、公共機関・企業を問わず、再発防止のための実効性ある制度づくりを支援していきます。
