2026.01.27

NHK「ハラスメント防止・撲滅宣言」をどう実装するか──宣言を“紙”で終わらせず、相談と不利益防止を運用に落とす|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】NHKが「ハラスメント」撲滅宣言 新会長就任に合わせ公表


NHKが「ハラスメント防止・撲滅宣言」を公表──新会長就任に合わせ人権尊重を明文化

NHKは2026年1月26日、井上樹彦新会長の就任に合わせ、人権尊重を明記した「ハラスメント防止・撲滅宣言」を公表しました。全ての業務の中で個人の人格を尊重し、該当する行為には厳正に対応する方針を明確化したものです。

NHKはこれまでも「倫理・行動憲章」などで人権尊重を掲げてきましたが、今回あらためて宣言という形で可視化し、職員だけでなく取引先にも順守を促す点が特徴です。テレビ局のガバナンスが厳しく問われる状況の中で、組織としての姿勢を前面に出した動きといえます。


宣言の中核──「毅然対応」「人権優先」「相談の公正」「不利益取扱いの禁止」

公表された宣言では、職場内外のハラスメント行為に対して「毅然と対応する」と明記されています。さらに、業務の遂行よりも人権や人格を「優先する」方針を掲げ、相談環境の充実にも言及しました。

特に実務的に重要なのは、相談に関して「プライバシーを厳守し公正に対応する」としたうえで、相談した人が本人の意に反して業務から外されるなど、不利益を被ることはないと明記した点です。ハラスメント対策は、罰する仕組みより先に、「言っても安全」という環境づくりで成否が決まります。その意味で、相談者保護を宣言の中核に据えたことは大きいと言えます。


背景──テレビ業界の人権ガバナンスが問われる中、NHKも対策を強化

旧ジャニーズ事務所やフジテレビジョンにおける人権問題を受け、メディア業界にはガバナンス強化の圧力が高まっています。NHKも2024年に出演者に対する人権尊重のガイドラインを公表するなど、対策を強化してきた経緯があるとされています。

制作現場は、番組の納期、外部スタッフとの関係、上下関係、フリーランスや協力会社との契約など、ハラスメントが発生しやすい要因が重なりやすい領域です。だからこそ、宣言が「職員向けの倫理」だけでなく、「取引先も含めた順守」へ踏み込んでいることは、現場に対するメッセージとして重要です。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──宣言で一番難しいのは「不利益防止」の運用

「撲滅宣言」は出すだけなら簡単です。難しいのは、現場で運用し続けることです。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、NHKの宣言で特に要となるのは次の3点です。

第一に、「相談した人が外されない」ことを本当に担保できるかです。本人の意に反して番組や業務から外される行為は、表向きは配慮に見える一方で、実態としては報復や排除になることがあります。相談者保護は、言葉ではなく、異動・担当変更・評価の運用ルール、記録、検証で成立します。

第二に、職場内外をまたぐハラスメントにどう対応するかです。放送業界では、社内の上司部下関係だけでなく、制作会社、フリーランス、出演者、取引先など多様な関係性が絡みます。誰が窓口になり、誰が調査し、どの範囲まで対応するのか。委託先や協力会社にも適用するなら、契約条項や取引ルールの整備が欠かせません。

第三に、「厳正対応」と「公正な手続き」を両立することです。厳正とは、即断即決で処分することではありません。事実確認、弁明の機会、再発防止策まで含めて、双方にとって納得可能なプロセスを積み上げることが信頼につながります。宣言が本気であればあるほど、手続きの品質が問われます。


結語:宣言の価値は「現場が安心して言えるか」で測られる

NHKの「ハラスメント防止・撲滅宣言」は、業務より人権を優先する姿勢、相談者の不利益防止、職場内外への適用という点で、メディア業界における重要なメッセージになり得ます。

ただし、宣言の価値は発表した瞬間ではなく、「次の一年」で測られます。現場が相談しやすくなったか、相談者が不利益を受けていないか、取引先や制作現場でも機能しているか。一般社団法人クレア人財育英協会は、宣言が“紙”で終わらず、運用として根づくための制度設計と現場実装を支援していきます。

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