2026.02.11

能美市職員自死と上司パワハラ認定をどう受け止めるか。「残業管理」と「あだ名文化」が人を追い詰める構造|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】石川・能美市職員の自死 原因は“上司パワハラ” 上司停職6か月の処分 市長らも給与3か月減額に


能美市職員の自死、原因は上司パワハラ──課長級を停職6か月、市長らも減給

石川県能美市は、2025年10月に市職員が自ら命を絶った事案について、原因が上司のパワーハラスメントにあったとして、総務課の課長級職員を停職6か月の懲戒処分にしたと発表しました。市長が会見で謝罪し、再発防止に取り組む姿勢を示しています。

能美市によると、2025年9月に「職場で課長がハラスメントに該当する言動がみられる」と内部申告があり、調査を開始しました。その翌日、総務部の職員が自死。その後、第三者委員会が設置され、2026年1月に調査結果が報告されたとされています。

市は、処分された課長級職員のパワハラ行為を認定したうえで、総務部長、市長、副市長の給与を3か月減額するとしています。年度内にも再発防止策を取りまとめる方針です。


第三者委の認定内容──「残業申請」運用と「あだ名」での侮辱が5件

報道によると、第三者委員会の報告書では、処分対象者がミーティングで部下らに対して「時間外が多いのは作業が遅いからだ」「事前申請のない残業は受け付けない」などと周知していたとされています。

さらに、亡くなった職員を含む3名に対し、「残業3兄弟」と呼ぶなど、合計5つの行為がハラスメントに認定されたと報じられています。ここで重要なのは、単なる叱責ではなく、管理手法とコミュニケーションの両面で、部下を萎縮させる形が重なっていた点です。


「働き方改革」の名で人を追い詰める危険──残業抑制と安全配慮の衝突

残業削減や事前申請の徹底は、本来は労務管理の適正化のために必要な仕組みです。しかし、その運用が「作業が遅いからだ」といった人格評価や、個人への羞恥を伴うあだ名文化と結びつくと、職場の心理的安全性は一気に崩れます。

「残業は減らせ」と言いながら、業務量が減らない。申請しなければ残業は認めないが、締め切りは変わらない。こうした矛盾が続くと、現場は「申請しない残業」「隠れ残業」へ追い込まれます。そこに侮辱的な言葉が加われば、助けを求めること自体が難しくなり、孤立が深まります。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「残業管理」「あだ名文化」「相談導線」の三点を同時に直す

この事案は、個人の暴言だけでなく、職場の運用と空気が積み重なって人を追い詰める典型です。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点では、再発防止の焦点は次の3点にあります。

第一に、残業管理の設計を「減らす」だけで終わらせないことです。事前申請の徹底は必要ですが、業務量との整合が取れていなければ現場は壊れます。申請の運用、業務配分、期限調整、応援体制をセットで整え、「守れば回る」ルールにすることが必要です。

第二に、あだ名やからかいを「軽いノリ」で放置しないことです。「残業3兄弟」のようなラベリングは、対象者の尊厳を削り、職場での立場を固定化します。ハラスメントの芽は、暴言よりも先に、こうした“軽い侮辱”として現れます。言語文化の基準を明確にし、管理職が止める責任を負う設計が必要です。

第三に、内部申告が出た直後の初動です。今回、申告の翌日に自死が起きたとされています。申告が入った瞬間に、被害者保護、別席・別ラインでの業務確保、メンタル支援、暫定措置を即日で走らせる必要があります。相談を受けたら、調査より先に「守る」を動かす。この順番が組織の安全配慮義務の核心です。


結語:再発防止は「処分」ではなく、職場が“回るルール”と“言える空気”で決まる

停職6か月という処分や、市長らの減給は責任の示し方として重要です。しかし、信頼回復は処分では戻りません。職員が安心して働ける職場を実装できるかで決まります。

残業を減らすなら、業務量と体制を見直す。言葉の文化を整え、あだ名を許さない。申告があれば即日で守る。能美市が年度内に取りまとめる再発防止策には、この三つを同時に動かす設計が求められます。一般社団法人クレア人財育英協会は、自治体が働き方改革を「追い詰め」にしないための制度設計と、職場の心理的安全性を高める運用を支援していきます。

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