2026.02.15
能美市で定年前退職34人「残業三兄弟」自死は氷山の一角だったのか|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】定年前の退職、3年で34人 職員パワハラ自殺の能美市(北陸放送/TBS NEWS DIG)
定年前退職が3年で34人──数字が示す「組織の疲労」
石川県能美市では、定年前の退職が直近3年で34人に上ると報じられました。自治体職員の早期退職は、個々の事情だけで説明できない場合があります。業務負荷、職場風土、相談のしやすさ、将来の見通しなど、組織の「働き続けられる条件」が崩れ始めた時に、数字として現れやすいからです。
今回、この「定年前退職34人」というデータが、職員の自死とパワハラ認定の報道と同じ文脈で提示されたことは重い意味を持ちます。単発の事件ではなく、職場の持続可能性が問われている、という読み方が必要になります。
「残業三兄弟」と過少申告要求──上司のパワハラが自死につながったと第三者委が認定
報道によると、能美市の総務部に勤務していた職員が、上司である課長級職員から残業時間を過少に申告するよう求められたうえ、他の2人と合わせて「残業三兄弟」というあだ名をつけられるなどのパワハラを受け、2025年10月に自死しました。
外部の第三者委員会は、上司によるパワハラが自死につながったと認め、能美市は上司を2026年2月6日付で停職6か月の懲戒処分にしたとされています。市長は相談体制の見直しと管理職研修を通じて再発防止に取り組む方針を示しています。
この事案が突きつける核心──「残業管理」と「言葉の文化」が一体で人を追い詰める
このケースの特徴は、二つの圧力が同時に起きている点です。一つは残業の過少申告要求という運用の問題です。残業抑制の名で、業務量はそのまま、申告だけを減らせば、現場は「隠れ残業」に追い込まれます。もう一つは「残業三兄弟」というラベリングです。あだ名は軽い冗談に見えますが、対象者を固定し、恥をかかせ、沈黙を強制する道具になります。
制度運用の矛盾と、言葉の侮辱が重なると、本人は逃げ場を失います。相談しても「本人の弱さ」に回収され、残業を申告すれば「遅い」と言われる。こうして追い詰められていく構造を、自治体は制度として断ち切らなければなりません。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──再発防止の焦点は「3点同時修正」
能美市が年度内に再発防止策をまとめるのであれば、ポイントは同時に三つ直すことです。一つだけ直しても、別ルートで再発します。
第一に、残業管理を「申告抑制」から「業務再設計」に戻すことです。事前申請の徹底は必要でも、業務量と期限、応援体制が整っていなければ意味がありません。残業を減らすなら、仕事の棚卸しと配分の見直しが必須です。
第二に、あだ名・からかい・軽い侮辱を放置しないことです。ハラスメントは怒鳴り声より先に、こうした言葉の文化として現れます。管理職が止める責任を負い、止めた人が損をしない運用を作る必要があります。
第三に、申告が入った瞬間に「守る」を動かす初動です。相談は調査の入口ではなく、保護の開始点です。別席、業務配分の調整、メンタル支援、外部窓口の案内を即日で走らせる。ここが遅れると、組織は取り返しのつかない損失を抱えます。
結語:退職34人という数字は、組織への最終通告になり得る
停職6か月という処分や研修の実施だけでは、信頼は戻りません。職員が「ここで働き続けられる」と思える条件を、業務と文化の両面で再設計できるかが問われています。
定年前退職が3年で34人という数字は、組織の疲労が可視化されたサインです。能美市の再発防止策が「お題目」で終わるのか、それとも運用を変えるのか。自治体全体に突きつけられた問いでもあります。一般社団法人クレア人財育英協会は、残業管理とハラスメント対策を一体で実装し、職員が安心して働ける職場づくりを支援していきます。
