2026.02.07

九州防衛局「パワハラ調査放置」賠償判決。ハラスメントは“行為”だけでなく「対応の遅れ」でも人を壊す|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】「このまま闇に葬られるのかとやりきれなかった」”パワハラ”調査結果知らせず放置 国に賠償命令 九州防衛局職員の訴え認める 福岡地裁


福岡地裁が国に賠償命令──パワハラ調査結果を約2年伝えず放置

九州防衛局に勤務する50代男性職員が、パワーハラスメントの相談後、調査結果を約2年近く知らされず精神的苦痛を受けたとして国に慰謝料を求めた裁判で、福岡地裁は2026年2月6日、国に5万円の賠償を命じました。

男性職員は専用窓口に相談したものの、調査から2年近く結果を教えてもらえなかったとして200万円を請求。判決は請求額全体は認めない一方で、防衛省側が回答すべき時期から10か月あまり案件を放置していたと認定し、「職務上の法的義務を怠った」と判断しました。


争点は「パワハラの有無」ではなく「調査と回答の放置」

この裁判の核心は、パワハラ行為そのものの認定ではなく、相談後の組織対応です。ハラスメント対応は、相談があった時点から「初動」「調査」「暫定措置」「結果の通知」「再発防止」までを期限付きで回すことが前提になります。

しかし本件では、結果が長期間通知されず、職員は「このまま握りつぶされるのか」「闇に葬られるのか」と感じたと語っています。被害の中心は、行為だけではなく、対応の遅れが生む不信と孤立だったと言えます。


裁判所の認定──「回答すべき時期から10か月以上放置」

福岡地裁の加藤聡裁判長は、防衛省が回答を行うべき時期から10か月あまり、男性の案件を放置していたと認定しました。その上で、職務上の法的義務を怠ったとして国の責任を認めています。

賠償額は5万円と小さく見えるかもしれませんが、判決の意味は金額ではありません。「相談を受けた組織が、期限内に回答する義務がある」「放置は違法になり得る」という線引きを司法が示した点にあります。


当事者の言葉が示すもの──「闇に葬られる恐怖」と制度不信

訴えを起こした男性職員は判決後、「このまま握りつぶされていくのか、放置され闇に葬られるのかと考えるとやりきれなかった。少し気持ちも晴れた」と述べています。

ハラスメント相談で最も深刻なのは、被害の内容よりも「言っても無駄」「動かない」「自分が不利になる」という制度不信が広がることです。相談窓口が形だけで運用が遅いと、次の相談者は沈黙し、被害は見えなくなります。放置は二次被害を生みます。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──ハラスメント対応の本丸は「期限」と「返答の義務」

本件は、ハラスメント対策が「窓口を作った」だけでは成立しないことを示しています。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、再発防止の焦点は次の3点です。

第一に、対応期限の明文化です。相談受理から一次回答、事実確認、結論通知まで、期限を規程に落とし込む必要があります。期限がない制度は、忙しさを理由に簡単に放置されます。今回のように「回答すべき時期」が争点になる以上、期限設定は必須です。

第二に、結論が出なくても「途中経過」を返す運用です。調査が長引く場合でも、申告者に対して進捗と理由を通知し、次の見通しを示す。沈黙は不信を生みます。途中経過の共有は被害者保護の一部です。

第三に、内部通報が握りつぶされない外部性の確保です。防衛や自治体など権限構造が強い組織ほど、内部で止まる危険があります。外部窓口の拡充、第三者の関与、報復禁止の徹底、記録の保全が、相談制度の信頼を支えます。


結語:ハラスメントは「対応の遅れ」でも人を壊す

パワハラの問題は、加害行為だけで終わりません。相談が放置され、回答がない状態が続くこと自体が、被害者にとって深刻な精神的負荷になります。今回の判決は、組織が「黙って時間を稼ぐ」ことで問題を消すことは許されないというメッセージでもあります。

一般社団法人クレア人財育英協会は、窓口の設置だけで満足せず、期限・途中経過・返答の義務を運用に落とし込み、相談した人が孤立しないハラスメント対応を実装する支援を続けていきます。

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