2025.10.11

ハラスメントの種類(2025年版)──定義、具体例、最新の法規制と実務対応まで

「ハラスメント 種類」を調べる方が本当に知りたいのは、名前のラベリングではなく、職場や顧客対応、採用現場で現実に起きているトラブルをどう見極め、どこから違法や不適切に踏み込むのか、そして組織として何を整えれば再発を予防できるのかという実務の勘どころです。本稿は、2025年時点の最新情報を踏まえ、ハラスメントの定義、代表的な種類、法令が義務化する防止措置、カスタマーハラスメントや就活セクハラの最新動向、実務フロー、社内方針の組み立て方まで、一続きの読み物として網羅します。

厚生労働省「職場におけるハラスメント防止」総合ページ
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(PDF)
東京都「カスタマーハラスメント防止条例」周知
ILO「仕事の世界における暴力・ハラスメント予防ガイド」

1.ハラスメントの輪郭をおさえる――「不法行為」と「義務化された予防」

ハラスメントは、相手の意思に反し、身体的または精神的な苦痛を与え、就業環境や人権を侵害する行為全般を指します。多くのケースでは民法上の不法行為になり得るため、損害賠償の対象となります。加えて、職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護に関するハラスメントについては、厚生労働省の指針に基づく「事業主の防止措置」が義務化されています。

企業は、方針の明確化と周知、相談窓口の整備、発生時の迅速・適切な事後対応、再発防止、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止までを一体で備える必要があります。全体像や義務化の範囲は厚労省の総合ページから確認できます。

2.まずは「法令で定義のある5種類」を押さえる

法令や指針で定義・類型が明確になっているハラスメントは、実務でも判断と対応が求められる「必修科目」です。

第一がパワーハラスメントです。優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動により就業環境を害するものを指します。厚労省の指針は、身体的・精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の六つを代表例に示しています。人前での長時間の叱責、達成不可能な目標の強要、隔離や業務剥奪、プライバシーの過度な詮索などがこれに当たります。

第二がセクシュアルハラスメントです。性的な言動によって不利益を与える「対価型」と、就業環境を害する「環境型」の二つに大別されます。身体への接触や卑猥な発言の反復、公私の関係を拒否したことを理由に配置転換や評価引下げを行うなどが典型です。

第三がマタニティハラスメント第四がパタニティハラスメントで、いずれも制度の申請・利用に対する不利益取扱いや、妊娠・出産・育児に関する言動で就業環境を害する行為が該当します。

第五がケアハラスメントで、介護休業や時短の利用に対する不利益取扱いや嫌がらせを指します。これら五つは、企業に防止措置が義務付けられており、方針・窓口・教育・事後対応の整備が前提となります。

3.職場で起きやすいその他のハラスメント――実務で頻出する代表例を文章で把握する

法令に明記された五つ以外にも、現場で頻繁に相談に上がる類型が存在します。カスタマーハラスメントは、顧客や取引先が社会通念上許容される範囲を超えた言動で従業員の就業環境を害する行為を指します。大声で長時間の謝罪要求、人格否定の罵倒、土下座の強要、SNSでの晒しなどが典型で、対応の線引きと打ち切り宣言、しかるべきエスカレーション(管理職、法務、警察)が文書化されていることが重要です。

不機嫌ハラスメント(フキハラ)は、ため息や無視、物音で不機嫌を示し続けて周囲を萎縮させる行為です。ロジカルハラスメント(ロジハラ)は、正論で相手を一方的に追い詰め、反論の機会を与えないコミュニケーションの暴力です。テクノロジーハラスメント(テクハラ)は、ITに不慣れな人を嘲笑したり置き去りにしたりする行為で、監視や過度なログ要求、専門用語の乱用などが含まれます。時短ハラスメント(ジタハラ)は、働き方改革の看板の下で業務量を据え置いたまま残業を禁止し、実質的にサービス残業を強いる運用です。

モラルハラスメント(モラハラ)は、人格否定や陰口、情報遮断などの精神的圧力で、上下関係のない同僚間でも成立します。年齢による侮蔑や排除はエイジハラスメント、性別役割の押し付けはジェンダーハラスメント、人種や国籍、言語を理由とする差別はレイシャルハラスメントです。リモートハラスメントは、テレワーク中の過度な監視や時間外連絡の強要、オンライン懇親の強制参加などを指します。

飲酒の強要や酔いに乗じた迷惑行為はアルコールハラスメント、強い体臭や香水の香り、タバコ臭で周囲に苦痛を与えるスメルハラスメント、過剰な「優しさ」で成長機会を奪うホワイトハラスメント、退職に追い込む嫌がらせのリストラハラスメント、申告後に被害者を非難・攻撃するセカンドハラスメント、性的指向や性自認に関するソジハラ、無断撮影や無断SNS投稿のフォトハラスメント、過度な踏み込みや詮索のコミュニケーションハラスメント、空調設定などで健康や快適性を害する温度ハラスメント、食のこだわりやカラオケの強要といった生活様式を押し付ける行為も、就業環境を害する状況ではハラスメントに該当し得ます。

採用関連では、就活セクハラやいわゆるオワハラなど、力関係の非対称性に付け込む行為が社会問題化しており、2025年には求職者へのセクハラ対策が義務化されました。

4.どこからが越境か――「相当性」の目線を持つ

境界線は、相手の感じ方で恣意的になるわけではありません。パワハラであれば、優越的関係の背景、業務上必要かつ相当な範囲かどうか、就業環境が害されているかの三要件に照らして判断します。人前での人格否定や長時間の叱責は基本的にアウトです。セクハラは、対価型と環境型のいずれかに当たるかを確認します。カスタマーハラスメントは、要求の妥当性と手段の相当性が軸です。大声で長時間の拘束や人格否定、土下座強要、晒し行為は、正当な苦情の範囲を明らかに逸脱します。

5.2025年の最新動向――義務化の広がりと国際スタンダード

2025年は、事業主の対応範囲が実質的に広がった年です。顧客等によるカスタマーハラスメントへの企業側の防止措置は、定義の明確化とともに義務化の方向が示され、就活生等に対するセクハラ対策も義務となりました。自治体レベルでは、東京都の「カスタマーハラスメント防止条例」が施行され、組織としての禁止の姿勢と救済のルートが明確になっています。国際的にはILOの暴力・ハラスメント撤廃条約(C190)に沿った包括的対策が標準となり、国内制度もその水準に近づきつつあります。

6.実務対応の流れ――受付から再発防止までを一本の線にする

組織は、受付、事実確認、暫定措置、相当な処分、被害者フォロー、再発防止という一本の線で動ける体制を整えておく必要があります。受付段階では、人事窓口に加え、外部ホットラインも案内し、匿名の相談も許容します。事実確認では、双方と第三者のヒアリング、ログやメール、映像の保全を慎重に進めます。二次被害の防止のため、席やシフト、在宅の暫定措置で距離を確保します。相当な処分は、就業規則と懲戒規程に照らし、比例原則を守って判断します。再発防止では、方針の再周知、ケース学習、管理職の判断力強化、評価制度への埋め込みまで含めて、文化を変えるところまで踏み込みます。

7.そのまま社内展開できる「防止方針」の書きぶり

ハラスメント防止方針は、宣言だけではなく、相談の経路、事後対応の原則、教育の頻度やタイミングまでを文章で示すと、現場が動きやすくなります。たとえば、「当社は、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護に関するハラスメント、カスタマーハラスメント等の一切を許容しない。相談窓口は人事と外部ホットラインの二系統で、匿名を含め受付ける。申出を理由とする不利益取扱いは行わない。発生が疑われる場合は、迅速かつ正確に事実確認を行い、被害者保護、行為者への相当な措置、再発防止を実施する。教育は入社時・昇格時・年次で実施し、管理職には実務判断研修を義務化する。」といった調子です。

8.よくある疑問に、判断の軸で応える

厳しい指導はどこからパワハラなのかという質問には、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害しているかという三要件の軸で答えます。人前での人格否定や長時間の叱責は、相当性を欠く可能性が高いと言わざるを得ません。褒め言葉でもセクハラになるかという問いには、受け手が明確に不快を表明しているのに反復すれば環境型セクハラのリスクが高まること、外見や身体への言及は控え、成果や行動を具体的に称賛するのが安全だと伝えます。正当なクレームとカスハラの線引きは、要求の妥当性と手段の相当性の二軸で判断し、大声での長時間拘束や人格否定、SNS晒しは正当な苦情を越えていると説明します。

9.最後に――分類をゴールにせず、救済と防止のスタートに

ハラスメントの種類は年々増え続けています。ラベルを覚えること自体に意味があるのではなく、いま目の前の言動が誰のどんな権利を傷つけ、就業環境をどのように害しているのかを言葉にし、救済と防止に踏み出すことが目的です。判断に迷ったら、厚労省の総合ページと、カスハラの実務マニュアルを出発点にしてください。東京都の条例やILOの国際ガイドは、国内外の沿革と今後の基準を理解する手がかりになります。分類表をゴールにせず、救済と予防のスタートとして使い倒す――その視点が、組織の信頼を守ります。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別案件は所属弁護士・社労士等の専門家にご相談ください。

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