2026.02.18

調査7カ月の沈黙が二次被害を生む。県立芸大ハラスメント問題は「透明性」から逃げられない|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】<社説>芸大ハラスメント問題 透明性確保が求められる


「調査しているのに何も見えない」状態が、信頼をさらに削る

琉球新報の社説は、県立芸術大学の元学生が琉球芸能専攻の男性教授からセクシュアルハラスメント被害を訴え、大学の調査開始から7カ月が過ぎたにもかかわらず、進展が見えないことを問題視しています。学外識者によるハラスメント防止対策委員会が調査しているとされる一方、情報が示されず、学生や県民の信頼回復につながっていない、という指摘です。
ハラスメント対応で最も危険なのは「手続きがあるから大丈夫」と組織が思い込み、被害者側には“何も変わらない時間”だけが積み上がることです。調査の厳正さと、透明性の確保は両立しなければなりません。


30年近い蓄積が示すのは「個人の問題」ではなく構造の問題

社説は、卒業生有志によるネットアンケートに、セクハラに加えてパワハラ、アカハラの見聞きも含む43件の事例が寄せられ、過去30年近くにわたるという点を挙げています。ここで見えてくるのは、「今回だけ」の話に閉じない構造です。
大学は2001年の全在籍者アンケートや相談員配置、05年・08年のアンケート、09年の外部調査委員会設置、学内シンポジウム開催など、対応を重ねてきたとされています。にもかかわらず、15年には教授がセクハラで懲戒免職、学長も戒告。19年にも教授がアカハラ・パワハラ・セクハラで減給、さらにアカハラで減給。24年には非常勤講師が懲戒解雇。
「対策をやったのに繰り返す」時、組織は二つの問いから逃げられません。なぜ止められないのか。なぜ言えないのか。ここに透明性が必要になります。


今回の事案が突きつけるのは「被害者ケア」と「加害者への暫定措置」の同時実行

社説によれば、被害は22〜23年に継続していたとされ、23年12月に生活相談とハラスメント相談窓口へ訴えたものの、被害者に寄り添う対応ではなかったと指摘されています。24年度からは相談しやすいよう担当を外部委託したとも述べられています。
また、当該教授が現在も授業を続けている点への疑問が提起されています。大学は後期授業開始前に学生アンケートを実施し、指導を望まない学生には別教員が対応しているとされますが、「学生に意思表示を求めるのは酷だ」という識者の指摘も紹介されています。
ハラスメント対応の要諦は、被害申告者に「選ばせない」ことです。受講回避の意思表示を当事者に求める設計は、本人に追加の負担を背負わせやすく、沈黙を強化します。


芸術系大学は「近さ」が強みであり、同時にリスクでもある

社説は、芸術系大学は少人数教育で教員と学生の距離が近く、師弟関係が強いこと、音楽系では個室での個人指導もあり、ハラスメントが起きやすい構造があると指摘しています。近さは教育の武器ですが、権限差と密室性が重なると、学生の逃げ場がなくなる。だからこそ「より高い教員のモラル」と「何重もの防止策」が必要だという主張です。
さらに、24年に県内の文化・芸術活動に携わるアートワーカーが不安定な収入・雇用・ハラスメントに苦しむ実態が明らかになったことに触れ、アートワーカーを育てる県立芸大がこの問題にどう関わるのかも問われる、としています。学校と現場は切り離せません。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──透明性とは「詳細の暴露」ではなく「運用の証拠」を出すこと

本件で誤解されがちなのは、透明性を「被害者を危険にさらす詳細公表」と同一視してしまうことです。透明性とは、個人が特定されない形で、組織が何をしているかを説明し、検証可能にすることです。具体的には次の三点が鍵になります。

第一に、調査のタイムラインを公表し、節目ごとの状況報告を行うことです。いつまでに何をするのか。中間報告は出すのか。被害者支援はどう行うのか。沈黙の期間を作らない設計が必要です。

第二に、暫定措置を「被害者に選ばせない」形で組むことです。受講回避の意思表示を学生に求めるのではなく、当該教員の指導・評価から学生を遠ざける運用を、組織の責任で実行することが必要です。

第三に、相談窓口と一次対応を再設計することです。窓口の外部委託は一歩ですが、相談後の初動、被害者ケア、報復防止、証拠保全、第三者性のある調査がセットで回らなければ機能しません。「相談したのに何も変わらない」を二度と起こさない運用が求められます。


結語:「時間がかかる」では済まない。長期化するほど被害は深くなる

社説は、訴えた元学生が心療内科に通い、仕事に行けなくなるなど生活に支障が出ていると述べ、被害者ケアの重要性を問いかけています。事実認定は厳正であるべきですが、被害者の回復は待ってくれません。
調査の透明性を確保し、暫定措置と被害者支援を同時に走らせる。師弟関係の濃い芸術教育ほど、密室性と権限差を制度で中和する。
一般社団法人クレア人財育英協会は、教育機関のハラスメント対策を「声明」ではなく「運用の証拠」に変える支援を続けていきます。

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