2026.01.31
長野大学オンライン授業アカハラ処分。「遅刻への怒り」が学習権を奪う瞬間を制度で止める|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】学生の遅刻に立腹、暴言浴びせ授業も切り上げ全出席者を欠席扱い…教材も削除し学習できない状況に
長野大学が非常勤講師を停職処分──オンライン授業でのアカハラを認定
長野大学(長野県上田市)は2026年1月28日、学生に対するアカデミック・ハラスメント(アカハラ)があったとして、40代の男性非常勤講師を停職の懲戒処分としたと発表しました。処分は1月16日付で、処分期間は非公開とされています。
大学によると、講師は2025年11月25日のオンライン授業で一部の学生が遅刻したことに立腹し、学生に暴言を浴びせました。その上で授業を途中で切り上げ、受講していた約100人の学生全員を欠席扱いとしました。さらに、オンライン上に掲載していた学習教材を削除し、事後学習ができない状況にしたとされています。
「遅刻への指導」が「全体への制裁」に変質したとき、アカハラになる
遅刻への注意や授業運営上のルールを伝えること自体は、教育活動として必要な場合があります。しかし本件で問題となったのは、対象が「遅刻した学生」だけにとどまらず、授業に参加していた全員を欠席扱いにしたこと、そして教材削除によって学習機会そのものを奪った点です。
大学教員や講師は、成績評価、出席管理、教材配布、授業運営など、学習の基盤に関わる権限を持っています。その権限を、感情的な怒りの発散や懲罰的な制裁として使った場合、学習権の侵害となり、アカハラとして問題化します。オンライン授業では、教材や出欠がシステム上で一括管理されるため、強い権限行使が短時間で広範に影響する点も見逃せません。
学生の報告で発覚、大学は自宅待機と代替授業で対応
本件は学生が大学事務局に報告したことで発覚し、大学は当該講師を自宅待機としました。授業は他の教員が代わって行っているとされています。つまり、大学としては「授業の継続」と「被害拡大の防止」を優先し、迅速な代替措置をとった形です。
一方で、教材削除や全員欠席扱いといった行為は、学生側にとって学習計画や成績評価に直結するため、大学は救済措置や再発防止策も含めて説明責任を問われることになります。特にオンライン授業では、ログや操作履歴が残るため、事実確認と再発防止の設計がしやすい環境でもあります。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「感情」と「評価権限」を切り離す大学運営へ
今回の事案が突きつけるのは、教育現場における「感情」と「評価権限」の距離です。遅刻に腹を立てること自体は人間として自然でも、その怒りが「全員欠席」「教材削除」という権限行使に直結した瞬間、教育は指導ではなく支配に変わります。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点では、大学が整備すべきポイントは次の3つです。
第一に、出席・成績・教材の運用ルールを講師個人の裁量に委ねすぎないことです。欠席扱いの基準、教材公開の最低期間、授業中断時の代替措置などを、学部・大学として明文化し、非常勤講師を含めて共有する必要があります。権限が大きい領域ほど、ルールで縛らないと「感情の運用」になってしまいます。
第二に、オンライン授業の「操作」が学習権を奪い得ることを前提にガバナンスを組むことです。教材削除、出欠一括変更、掲示の停止など、講師の操作一つで学生の学習環境が崩れます。だからこそ、操作ログの監査や、緊急時の復旧手順、管理者権限の設計など、システム運用とハラスメント防止を連動させる必要があります。
第三に、学生が「言える」導線を常設することです。今回の発覚は学生の報告によるものでした。つまり、相談窓口が機能した側面がある一方、報告できない学生がいれば被害は埋もれます。匿名相談、第三者窓口、報復禁止の明記など、学生が安心して声を上げられる仕組みを常時運用することが、アカハラ抑止の現実的な手段です。
結語:遅刻の指導はできても、学習権の剥奪はできない
遅刻を注意することと、学習機会を奪うことは全く別です。オンライン授業では、講師の怒りがシステム操作として現れ、学生全体に一瞬で波及します。だからこそ、教育機関は「教員の裁量」を尊重するだけでなく、「裁量が越境しない仕組み」をセットで設計しなければなりません。
一般社団法人クレア人財育英協会は、大学・学校がアカハラを個人問題で終わらせず、評価権限とシステム運用を含めたガバナンスとして整え、学生の学習権と教職員の健全な指導を両立できる仕組みづくりを支援していきます。
