2025.10.21
青森テレビ社長がパワハラで辞任──「ばかやろう」発言が映す組織風土と再発防止への課題
【出典】朝日新聞デジタル(2025年10月20日配信)
青森テレビ社長がパワハラで辞任 「ばかやろう」などと発言
社長の暴言を調査チームが認定
TBS系列の青森テレビは20日、小山内悟社長(69)が社員へのパワーハラスメントや不適切な指導が認められたとして辞任したと発表しました。外部弁護士を中心とした調査チームによる報告書で、「小学生でも分かるでしょう」「ばかやろう」といった発言を含む3項目をパワハラと認定。さらに、出身校への言及や採用面接での圧迫的な質問など3項目を「不適切な言動」と判断しました。
同社では2020年度から23年度にかけて21人の社員・嘱託社員が中途退職し、そのうち1人が「社長の言動が関係する」と回答。休職者6人のうち1人も社長の発言に起因するとされています。調査報告後、小山内前社長は「ご迷惑をおかけしたことをおわびします」と頭を下げた一方で、「報告書の内容には承服できない部分もある」とも述べました。
組織のリーダーに求められる「言葉の責任」
社長の暴言は個人の言葉であっても、組織全体の文化を象徴する行為です。調査報告によると、小山内氏の言動は社員への恫喝(どうかつ)や人格否定に及ぶ場面もあり、現場には「発言に意見できない空気」が生まれていたといいます。上司の一言が部下のモチベーションや心理的安全性を大きく左右することは、働き方改革が進む中で企業が直面している普遍的な課題です。
KCPでは、こうした問題を「権限の誤用による組織的ハラスメント」と位置づけています。組織の上層部が権威と指導を混同すると、現場の信頼は急速に失われます。「言葉の力」は指導のためのものではなく、組織の信頼をつくるために使われるべきです。
雇用クリーンプランナー(KCP)の提言──再発防止の鍵は「透明性」と「心理的安全性」
雇用クリーンプランナーの視点では、パワハラ防止は「処分」で終わらせるべきではありません。
リーダーの言葉が社員にどう届くかを可視化し、組織として学び直す仕組みが必要です。
1. 外部通報窓口の常設
調査後に同社が発表した通報制度の導入は評価できます。
しかし、通報を機能させるには「報復されない」という信頼の担保が欠かせません。
外部の専門家や弁護士による独立性の高い相談機関を設けることが重要です。
2. 管理職のリーダーシップ研修
上司が「注意」と「恫喝」、「指導」と「支配」を混同しないよう、ハラスメントリテラシー研修を体系化することが必要です。
「叱る」ではなく「支える」文化を浸透させることが、現場の安全を守ります。
3. 社員の声を拾うモニタリング制度
アンケートや1on1など、社員の体験を定期的に確認する心理的安全性のモニタリング制度を導入すべきです。
定性的な「声」を記録・共有し、経営陣が自らの言動を検証する文化を育てることが再発防止につながります。
言葉で築く信頼、言葉で壊れる組織
今回の事件は、企業のトップが放つ言葉の重みを改めて問いかけるものです。
「ばかやろう」「小学生でも分かるだろう」といった一言は、単なる暴言ではなく、組織文化を破壊する行為です。
新社長の今井正樹氏は「社員が安心して働ける環境をつくりたい」と語っています。
企業の再生は、謝罪や制度だけではなく、日々の対話と傾聴から始まります。
KCPは、あらゆる職場において「権限よりも尊重を」「沈黙よりも対話を」掲げ、人が信頼で働ける社会を支える仕組みづくりを続けていきます。
