2025.10.19
「残業代1.5倍」でも働き方は楽にならない?──高知県の新条例に専門家が警鐘、「ワークライフバランスの罠」とは
【出典】Yahoo!ニュース(2025年10月18日配信)
“残業代1.5倍”でも楽にならない? 高知県の新条例に専門家が“待った”「ワークライフバランス」の罠とは
高知県、全国初の「残業代1.5倍」条例を可決
高知県は、職員の時間外労働(残業)に対する割増賃金率を25%から50%に引き上げる全国初の条例を制定しました。
この条例は来年度1年間の試行措置で、県は「残業を特別な労働として位置づけ、仕事と家庭の両立=ワークライフバランスの推進につなげたい」と説明しています。一方で専門家からは、「“残業代1.5倍”という数字が一人歩きすれば、働き方改革の本質を見失う危険がある」と懸念する声も上がっています。
専門家「効率化だけでは“労働強化”になる危険」
千葉商科大学の常見陽平准教授は、著書『なぜ、残業はなくならないのか』の中で「ワークライフバランス改革の裏には“労働強化”の罠が潜む」と指摘します。「無駄な仕事を減らせ」「効率化を進めろ」というスローガンだけでは、職員が“常にアクセル全開”で働かされることになりかねないのです。残業削減を進めるならば、単に時間を減らすのではなく、どの業務をやめるかどこをAIや機械に置き換えるかを仕事のデザインとして可視化することが重要だとしています。
公務員の「効率化できない仕事」とは
常見氏はさらに、「自治体には“効率化してはいけない仕事”がある」とも述べています。
たとえば土木・防災・福祉などの現場は、住民の安全に直結するため、単純な“合理化”が許されません。
「人手が足りない」「コストを減らしたい」と削った結果、安全や安心が損なわれる恐れもあります。
また、「ワークライフバランス」という言葉の背景には、政府や自治体が労働力確保のために人を“動員”する意図があるとも分析。「ライフ=休息」ではなく、家事・育児・介護など無償労働(アンペイドワーク)が増える現実にも目を向けるべきだと指摘します。
雇用クリーンプランナーの視点──“残業改革”の本質は「働く構造の再設計」
雇用クリーンプランナー(KCP)の観点では、高知県の条例は「残業代アップ」よりも「仕事の見直し」が焦点になるべきだと指摘します。
・残業を減らす前に「何をやめるか」を明確化する
・職員の業務を可視化し、属人化を防ぐ仕組みをつくる
・AI・デジタル技術の導入で、単純労働を減らす
さらにKCPは、「ワークライフバランス=制度の問題ではなく、文化の問題」だと強調します。
上司の言葉や組織風土が変わらなければ、制度があっても残業は減らず、働き方も変わりません。
まとめ──「数字」ではなく「構造」で変える働き方
“残業代1.5倍”という数字は魅力的に見えますが、それだけでは職場は変わりません。本当に求められるのは、「時間の削減」ではなく「働き方の再設計」。制度を整えるだけでなく、現場が安心して「ムリ・ムダ・ムラ」を言葉にできる風土づくりこそ、真の働き方改革の出発点です。
