2026.10.03
北海道大が教授会の対応を「組織的アカハラ」と認定、准教授らを学生指導から外す
この記事の結論:北海道大学が、理学研究院の化学部門に所属する准教授らを学生の指導から外し、研究室から別室へ移すなどした教授会(講座委員会)の対応について、「組織的なアカデミックハラスメントに当たる」と認定していたことが、2026年10月1日に共同通信の報道で明らかになりました(日本経済新聞は10月2日付で掲載)。北大は9月30日の取材には回答を差し控えていましたが、10月1日に認定を明らかにしたと伝えられています。個人の言動だけでなく、長く続いた慣行や合議体の決定もハラスメントと認定され得ることを示す事例です。大学や研究機関に限らず、企業や団体も「昔からそうだった」という慣行を点検し、相談から調査・是正までが機能する体制を整えることが重要です。
- 化学部門では、教授が不在になった場合に残った准教授が研究室をそのまま運営できない慣行が続いていたと報じられた。
- 教授会に当たる講座委員会が2020年度に、准教授を別室へ移し学生を新たに配属しない措置を認め、2026年7月に北大ハラスメント対策室が組織的アカハラと認定した。
- 役職者の個人的な言動だけでなく、慣行や合議体の決定もハラスメントになり得る。組織は慣行の点検と、独立した相談・調査の仕組みづくりが求められる。
北大が認定した「組織的アカハラ」とは何が起きたのか
共同通信などの報道によると、北海道大学は理学研究院の化学部門で、准教授らを学生の指導から外し研究室を移すなどした教授会の対応について「組織的なアカデミックハラスメントに当たる」と認定していました。准教授らは狭いスペースで研究を続けながら、大学側に対応の見直しを訴えていたとされます。北大は当初、一部報道を受けた9月30日の取材に「関係者のプライバシー保護および内部情報に関わり回答を差し控える」としていましたが、10月1日に認定を明らかにしたと伝えられています。
関係者への取材では、化学部門では、教授が不在になった場合、残った准教授は研究室をそのまま運営できないといった慣行が続いていたといいます。教授会に当たる「講座委員会」は2020年度、新任教授が元からいた准教授を研究室から別室に移動させ、そこに学生を新たに配属しないなどの措置を取ることを認めました。准教授らの訴えを受けて北大ハラスメント対策室が調査し、2026年7月に教授会の対応を組織的なアカハラだったと認定しています。
准教授らは2024年1月に扱いを不服として陳情書を提出し、これを受けて理学研究院は待遇の見直しを進め、独立した研究室の運営と学生指導の再開を認めたと報じられています。
報道された内容から、組織として学べる視点を整理すると以下の通りです。
| 項目 | 報道された内容 | 組織が学べる視点 |
|---|---|---|
| 背景にあった慣行 | 教授が不在になった場合、残った准教授は研究室をそのまま運営できない慣行が続いていたとされる。 | 「前からそうだった」という慣行が、特定の人の役割や権限を不当に制限していないかを点検する。 |
| 2020年度の決定 | 講座委員会が、准教授を別室へ移し学生を新たに配属しない措置を認めたとされる。 | 合議体の決定であっても、ハラスメントに当たり得る。決定の理由と影響を記録し、定期的に検証する。 |
| 調査と見直し | 2024年1月の陳情書提出後、ハラスメント対策室が調査し、2026年7月に組織的アカハラと認定。待遇の見直しも進められた。 | 申出から是正までには時間がかかり得る。相談を受けた初動と、進捗の共有が信頼を左右する。 |
「慣行」や「決定」もハラスメントになり得る、という警鐘
私たち一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメントのない健全な職場環境づくりを推進する立場として、今回の北大の認定が、ハラスメントを「特定の個人の暴言や暴力」だけでなく、組織の慣行や決定の問題としても捉える重要な事例だと考えています。大学が自ら調査し、組織的な問題として認定したことは、再発防止に向けた大切な一歩といえます。
ただし、報道によれば、措置が認められたのは2020年度で、認定は2026年7月です。慣行として定着した取り扱いほど、当事者以外は問題に気づきにくく、声を上げた側が長く不安定な立場に置かれるおそれがあります。これは大学に限った話ではなく、企業の部署異動、役割の取り上げ、配属や評価の決定といった場面でも同様に起こり得ます。相談者が不利益を受けないこと、調査が当事者から独立して行われることが欠かせません。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点:組織の慣行・決定を点検するための要点
今回の報道を、自社・自組織に引き寄せて点検する際のポイントは以下の通りです。
- 慣行や役割分担の棚卸し:
「暗黙のルール」「昔からのやり方」によって、特定の人の業務、指導、配属が制限されていないかを洗い出します。理由を説明できない慣行は、見直しの対象です。 - 組織の決定も対象にできる、独立した相談・調査の窓口:
上司や部署の決定そのものに疑問がある場合でも相談できるよう、社内の上下関係から独立した窓口を整えます。KCPなど外部の専門家と連携できる体制があると、公平性を保ちやすくなります。 - 申出後の進捗共有と、不利益取扱いの禁止:
相談者に調査の見通しを定期的に伝え、是正後も待遇や役割が不当に変わらないかを確認し続けます。相談したことを理由とする不利益な取扱いは行わないことを明文化し、周知します。
結語:個人の問題から「組織の仕組みの問題」へ
北大の事例は、ハラスメントが「誰かの人柄の問題」として片付けられず、組織が長く続けてきた慣行や決定の中にも潜むことを示しています。指導や運営の名目で行われたことであっても、相手の立場や研究・業務の機会を不当に奪う結果になれば、問題として問われ得ます。
企業や団体にとっても、他人事ではありません。慣行の点検と、安心して相談できる独立した窓口の整備を進め、組織全体で互いを尊重できる職場環境を築いてまいりましょう。
組織の慣行を点検し、安心して相談できる体制をつくるために
アカデミックハラスメントやパワーハラスメントは、慣行や上下関係の中で見えにくくなり、相談の遅れや人材の流出につながりかねない重大な経営・運営上のリスクです。一般社団法人クレア人財育英協会では、ハラスメント撲滅のための啓蒙活動の一環として、慣行の点検、相談窓口の運用、公正な事実確認と再発防止の体制構築をサポートする専門家「雇用クリーンプランナー(KCP)」の育成と認定を行っています。
「自社の暗黙のルールを点検したい」「上司や部署の決定に関する相談も受け止められる窓口をつくりたい」とお考えの企業様は、ぜひ当協会の資格認定プログラムをご活用ください。
